里中満智子さん著書『天上の虹』がきっかけで古代史と『万葉集』が好きになったみくるです。
今回は「大口の真神原に降る雪は」の歌碑がある「明日香民俗資料館」が併設されている「奈良県立万葉文化館」で開催されていた「装いと意匠からひもとく万葉日本画展」と、里中満智子さん揮毫の万葉歌碑をご紹介します。
奈良県立万葉文化館
「奈良県立万葉文化館」は、万葉のふるさと・奈良にふさわしい『万葉集』を中心とした古代文化に関する総合文化拠点です。
常設展の他、ワークショップ、講演会、万葉集をよむ講座、展覧会などが開催されています。
装いと意匠からひもとく万葉日本画展
「装いと意匠からひもとく万葉日本画」展を見に行った際の写真です。

『万葉集』を深く読み込んで、当時の服飾について研究して描かれた作品はまるで『天上の虹』の世界。
細かく文様を描き込まれた万葉衣装が煌びやかでとても綺麗でした。

ポスターにある赤が印象的な作品は大伴家持の歌からです。
春の苑 紅にほふ 桃の花
下照る道に 出で立つおとめ
万葉集 巻19-4139 大伴家持
(現代語訳)
春の庭が紅色に美しく照り輝く桃の花が、木の下まで照り映えている道に出てたたずむ少女よ。
里中満智子さんの書と画による万葉歌碑
こちらの歌碑は「奈良県立万葉文化館」駐車場の一角の、「明日香民俗資料館」1階のチャレンジショップ「明日香夢」前に建っています。

(原文)
八釣川 水底不絶 行水
續戀 是比歳
万葉集 巻12-2860 柿本人麻呂歌集
(読み下し文)
八釣川 水底絶えず 行く水の
継ぎてぞ恋ふる この年頃を
(現代語訳)
八釣川の水底を絶えず流れゆく水のように絶えず恋しく思う。この何年かを。

この歌の左注に、「右の二十三首は、柿本朝臣人麻呂歌集が歌集に出づ」とあり、23首中の一首です。
この歌は八釣川の清流の情景を序詞に用いて、恋の思いの深さを歌います。この川は万葉文化館の東、多武峰連山の一峰、八釣山から桜井市高家、明日香村八釣を経て飛鳥坐神社の北側に流れ下る谷川。八釣の弘計皇子神社あたりでは、今も絶えることなく岩場を清水がそそいでいます。
八釣川の歌の解説板より引用
この歌碑は「奈良県立万葉文化館友の会」解散記念事業として2019年3月に建立されました。
柿本人麻呂歌集とは
「柿本人麻呂歌集」は人麻呂と他の人達の歌をまとめた歌集を指しますが、歌集としては現存していません。編纂は人麻呂自身によるものなのか、はっきりしたことは分かっていません。
『万葉集』には、題詞と左注に「柿本人麻呂歌集」と記載された歌が364首あります。八釣川の歌もその内の1首です。
里中満智子さんは人麻呂が個人的に歌を集めはじめたのが、万葉集のはじまりだったのではないかと考えられています。
「柿本人麻呂歌集」と記載された歌が364首も収められているので、そう考えるのが自然なように思います。
里中満智子さんより届いた奈良へのエール
『県民だより奈良』2022年10月号に、この歌碑と一緒に写真に収まる里中満智子さんが載っていました。
奈良は万葉の時代からの風景が残り、『万葉集』のゆかりの場所も数多くあります。あの人が、あれを思いながら、この場所に立っていたのかと感じられ、本当にバーチャルなタイムマシーンといったところですね。イメージだけでもタイムスリップできるので楽しいです。歴史的な景観を維持している地域の方々には、大変なご苦労があると思います。それでも、ずっと大切に見守ってきたからこそ、今に残っているものがたくさんあります。
あの憧れの人から奈良へのエール/奈良県公式ホームページ (pref.nara.jp)
バーチャルなタイムマシーンって本当にそうだと思います。
『万葉集』にゆかりのある場所が身近にあって、実際にその場に行って、いにしえに想いを馳せられることを幸せに思います。大切に守って行きたいです。
奈良県立万葉文化館はこういった展示などを通して、奈良の歴史と文化に触れることができる、素晴らしい施設です。
奈良県立万葉文化館へのアクセス
奈良県高市郡明日香村飛鳥10
無料駐車場あり
こちらの記事は、「奈良県立万葉文化館」で開催中されていた「万葉 恋ものがたり」展の模様をご紹介しています。
最新の展覧会の情報は「奈良県立万葉文化館」の公式サイトより「展覧会」のページをご覧ください。
最後までお読みいただきありがとうございます。