NHK大河ドラマ「光る君へ」を毎週楽しみにしているみくるです。番組内で紹介されるのを見て、和歌により親しみを持つようになりました。
番組に登場する人物が詠んだ歌を『なぞりがき百人一首』よりご紹介してきました。
今回は紫式部の娘の大弐三位(藤原賢子)が詠んだ歌をご紹介します。
「光る君へ」では、南沙良さんが演じられています。

まひろの娘 藤原 賢子(ふじわらのかたこ)
南 沙良(みなみ・さら)
まひろ(紫式部)と藤原宣孝の娘。祖父の為時にかわいがられて育つ。まひろには反発する時期があるが、その文才を受け継ぎ、やがて宮仕えすることに。実の父は道長である。
【「光る君へ」人物紹介】藤原 賢子 ◆ 南 沙良 – 大河ドラマ「光る君へ」 – NHK
『なぞりがき百人一首』58番/大弐三位
有馬山 猪名の笹原 風吹けば
『百人一首』58番の大弐三位の歌は白々しい男への皮肉を詠んだ歌です。

有馬山 猪名の笹原 風吹けば
いでそよ人を 忘れやはする
58番/大弐三位
(現代語訳)
摂津・有馬山の猪名川沿いに広がる笹原は風が吹くと「そよそよ(そうだそうだ)」と葉音を立てますが、ええ、まさにそうです、私が貴方をどうして忘れたりするものですか(貴方の方こそ最近ちっともいらっしゃらないくせに)
(語義)
有馬山猪名の笹原…兵庫県六甲山系のひとつの有馬山の裾野に広がる猪名川沿いの平原。「風吹けば」までが序詞。
いでそよ…「いで」は感嘆詞。「そよ」は葉音のそよそよと「そうだ」という意味の「そよ」との掛詞。
やはする…反語の係助詞「やは」+「する」で係り結び
詞書には「離れ離れなる男の『おぼつかなく』など言ひたりけるに詠める」とあります。しばらく来なかった男が、「不安です(あなたが心変わりしていないかと思って)」と手紙を寄越してきたので、「よくもそんなことが言えますこと」というような気持ちで返した歌というわけです。
大弐三位(999?-1082?)藤原賢子。平安中期の女流歌人。紫式部の娘。母の後を継いで18歳の頃中宮・彰子に出仕。その後藤原道兼の次男・兼隆と結婚、一女をもうける。1025年、後一条天皇の皇太弟・敦良親王に皇子(親仁親王)が生まれ乳母に。その後高階成章と再婚。
再婚した高階成章が太宰大弐正三位であったので、大弐三位と呼ばれました。
風が「そよそよ」と音を立てるのにかけて、「そうよ、そうなのよ」と返し、優雅に皮肉を言ってのけるのは、紫式部の娘らしく、したたかな職業人という感じがしました。

乳母とその親族の活躍が歴史の表舞台に出てくるのは、わが国では平安時代後期・院政期以降で、大弐三位はそのはしりといえます。平安期の女官は通常「姫」に出仕したので、いわゆる「乳兄弟」として乳母の子女が取り立てられるというケースはまれでした。
「親王」に出仕したことが珍しかったのですね。
『源氏物語』には光源氏の乳兄弟の「藤原惟光」が登場します。大弐三位が乳母になったのは紫式部が他界してからなので、娘と同じような乳母を先に描いていたということになります。
もっとも大弐三位の子女は娘だったので、惟光のように取り立てられるということは無かったそうです。
光る君へでの描かれ方
「光る君へ」第25回「決意」では、まひろが藤原宣孝の妾になる様子が描かれるようです。
藤原宣孝は佐々木蔵之介さんが演じられています。

「光る君へ」公式サイトのプロフィールが「まひろの夫」に変わっていました。
まひろの夫 藤原 宣孝(ふじわらののぶたか)
佐々木 蔵之介(ささき・くらのすけ)まひろ(紫式部)の父・藤原為時とは職場の同僚で同年配の友人どうし。世知にたけ、鷹揚(おうよう)な性格の男性。まひろのことは幼いころから知っており、よい話し相手となって温かく見守る。
藤原 宣孝◆佐々木 蔵之介 – 大河ドラマ「光る君へ」 – NHK
大弐三位は紫式部と藤原宣孝との間に生まれた娘です。

まひろは藤原道長にずっと思いを寄せていたので、どういう経緯で藤原宣孝と結婚するのだろうかと思っていましたが、第24回「忘れえぬ人」では宣孝に想いを伝えられ心を動かすまひろが描かれていました。

「自分が思っている自分だけが自分ではないぞ」「忘れえぬ人がいてもよい。それもお前の一部だ。ありのままのお前を丸ごと引き受ける。それができるのは私だけだ」という名台詞の連発に、この人ならとまひろが思うのにもの納得でした。
まひろが結婚したことを知った時、道長がどのような反応をするかなど、今後も色々と楽しみです。
「光る君へ」の登場人物たちが詠んだ歌
「光る君へ」のおかげで『百人一首』の歌人たちがぐっと身近になりました。「光る君へ」の登場人物たちが詠んだ歌を番組での描かれ方と感想を交えてご紹介しています。
42番/清原元輔(清少納言の父)
➡【なぞりがき百人一首】清少納言にプレッシャーを与える存在「42番/清原元輔」〈光る君へ〉
53番/右大将道綱母(藤原道綱母)
➡【なぞりがき百人一首】「光る君へ」登場で注目集まる!道綱母の歌~兼家との輝かしい日々
54番/儀同三司母(高階貴子)
➡「光る君へ」で道隆が最後に口にした妻の歌「54番/儀同三司母」【なぞりがき百人一首】
55番/大納言公任(藤原公任)
➡【なぞりがき百人一首】「光る君へ」町田啓太さん演じる貴公子ぶりが人気!「55番/大納言公任(藤原公任)
56番/和泉式部
➡【なぞりがき百人一首】紫式部と共に中宮・彰子に出仕「56番/和泉式部」と光る君へ
57番/紫式部
➡大河ドラマ「光る君へ」のタイトルはこの歌から!?【なぞりがき百人一首】57番/紫式部 | みくるの森
58番/大弐三位
(当記事)

59番/赤染衛門
➡大河ドラマ「光る君へ」に登場で話題!【なぞりがき百人一首】59番/赤染衛門を演じるのは元タカラジェンヌ
62番/清少納言
➡【なぞりがき百人一首】「光る君へ」ファーストサマーウイカさんの魅力的な演技で人気!「62番/清少納言」
63番/左京大夫通雅
➡【なぞりがき百人一首】伊周の長男で悪三位と呼ばれる「63番/左京大夫通雅」と光る君へ
68番/三条院(三条天皇)
➡【なぞりがき百人一首】道長に圧迫され続けた不遇の生涯「68番/三条院(三条天皇)」
なぞり書きに使用したガラスペンとインク
笹原から連想して「ガラスペンで楽しむインクセット」の「松葉」のインクでなぞりました。

ガラスペンで楽しむインクセット グリーン&ブラウン 東京書店
こちらの記事で詳しくご紹介しています。
ガラスペンは「COCOUNITYガラスペンセット」のものを使いました。
使用したなぞり書きの本
なぞりがき百人一首 ユーキャン学び出版(2020/10/23)
本の内容についてはこちらの記事で詳しくご紹介しています。
➡堂鳩でなぞる【なぞりがき百人一首】1番/天智天皇【万年筆のある毎日】
最後までお読み頂きありがとうございます。