明日香と万葉集が好きなみくるです。
犬養万葉記念館で頂いた「明日香村の万葉歌碑を歩く」を片手に万葉歌碑巡り、40基全て見て歩こうと思っています。
今回は3番の大伴家持の歌をご紹介します。
わがやどに蒔きしなでしこいつしかも【大伴家持】
歌碑は5番の元明天皇の歌碑と同じく、飛鳥川添いの遊歩道にあります。
上流側へ150mほど行ったあたりです。
(題詞)
大伴宿禰家持の坂上家の大嬢に贈れる歌一首
(原文)
吾屋外尓 蒔之瞿麥 何時毛
花尓咲奈武 名蘇經乍見武
(読み下し)
わがやどに 蒔きしなでしこ いつしかも
花に咲きなむ なそへつつ見む
巻8-1448 大伴家持
(現代語訳)
わが家の庭に蒔いたなでしこは、いつ花が咲くのだろうか。
花が咲いたら、あなたと見なして眺めたいものです。
大伴宿禰家持が大伴坂上大嬢に贈った恋の歌です。
坂上大嬢は大伴坂上郎女の娘で、後に家持の妻となりました。
この時代のなでしこはカワラナデシコといい繊細な美しいピンク色の花です。
家持はとくになでしこの花が好きでした。
可憐なピンクの花に想い人を例えるとはなんともロマンティックです。
大伴家持が【なでしこ】を詠んだ歌
(読み下し)
なでしこが 花見るごとに 少女らが
笑まひのにほひ 思ほゆるかも
巻18-4114 大伴家持
(現代語訳)
なでしこの花を見るたびにあの愛おしい乙女の美しく艶やかな微笑みが思い出されてならない。
なでしこが その花にもが 朝な朝な
手に取り持ち手て 恋ひぬ日なけむ
巻3-408 大伴家持
(現代語訳)
あなたがなでしこの花であったらいいのに。
そうであったなら毎朝毎朝大切に取り持って愛でて慈しみましょうに。
どちらも坂上大嬢に贈った恋の歌です。
ふたりは幼馴染で、家持が15歳、大嬢が11歳の時に結婚しました。
想い人をなでしこに例えた可愛らしい恋が実ったのですね。
【なでしこ】は秋の七草のひとつ
丹比真人國人の「明日香川 行き廻る岡の秋萩は」の歌をご紹介した記事で、
萩の花は、万葉人によって最も愛された花です。
万葉集の花の歌の中では、梅よりも多く、140首以上も詠まれています。
と書きましたが、大伴家持はなでしこが好きだったのですね。
萩の花も、なでしこも「秋の七草」のひとつです。
しっとりとした秋の花や長雨は思いを巡らすのにお似合いだと思いました。
歌碑「わがやどに蒔きしなでしこいつしかも」のアクセス
奈良県高市郡明日香村雷
雷橋より飛鳥川沿いの遊歩道を上流側へ150mほど行ったあたりにあります。
詳しくはこちらをご覧ください。
明日香村の万葉歌碑を歩く
「犬養万葉記念館」で頂いた『明日香村の万葉歌碑を歩く』に掲載されている万葉歌碑40基をまとめてご紹介しています。
最後までお読み頂きありがとうございます。