近畿で10例!貴重な分銅形土偶も【令和6年度 発掘調査速報展 50㎝下の桜井】桜井市立埋蔵文化財センター

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今回は「桜井市立埋蔵文化財センター」で開催中の「令和6年度 発掘調査速報展29 50㎝下の桜井」の模様をご紹介します。

「令和6年度 発掘調査速報展29 50㎝下の桜井」のパンフレット
市立埋蔵文化財センター/桜井市

会期:4月24日(水曜日)~令和6年9月29日(日曜日)

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桜井市立埋蔵文化財センター

常設展示

桜井市立埋蔵文化財センターは、桜井市の埋蔵文化財の発掘調査や研究の成果を社会に普及、地域文化の振興に役立てる場として芝運動公園の一角に、昭和63年10月に建設された施設です。

桜井市立埋蔵文化財センター

常設展示と年3回の特別展と企画展が開催されています。

こちらの記事で常設展示の模様をご紹介しています。

令和6年度 発掘調査速報展29 50㎝下の桜井

はじめに

今回の速報展では、令和5年度に行われた桜井市内の遺跡の発掘調査の成果が紹介されています。

令和6年度 発掘調査速報展29 50㎝下の桜井「はじめに」

昨年度は安倍寺跡、藤原京関連遺跡3件、城島遺跡、戒重城跡で合計6件の発掘調査がおこなわれました。

安倍寺跡第23次調査では中心伽藍周辺で建物の礎石がみつかり、藤原京関連遺跡では第72次調査で縄文時代後期の土器や土偶が出土したほか、第73次・74次調査では藤原京の条坊に関する道路側溝を確認しています。また、戒重城跡では初の調査がおこなわれ近世の戒重陣屋に関する発見があり、各調査で大きな成果を得ることができました。

こうした発掘調査の成果について出土品や写真を展示し紹介します。この展示会をきっかけに50㎝下にひろがる桜井市の歴史に親しんでいただければ幸いです。

50㎝下の桜井「はじめに」
「令和6年度 発掘調査速報展29 50㎝下の桜井」展示室の様子

令和5年度発掘調査地

遺跡の多さに驚きました。50㎝下の桜井に広がる世界に興味津々。

令和5年度発掘調査地

令和5年度は6件の発掘調査が行われました。

  • 安倍寺跡 第23次調査
  • 大藤原京関連遺跡 第72次調査
  • 城島遺跡 第55次調査
  • 戒重城跡 第1次調査
  • 大藤原京関連遺跡 第73次調査
  • 大藤原京関連遺跡 第74次調査

安倍寺跡 第23次調査

安倍寺跡は安倍木材団地に存在した寺院で、7世紀中頃に建立されたと伝わっています。現在は安倍寺史跡公園として、塔や金堂とこれらを囲んだ回廊の基壇が復元されています。

安倍寺跡 第23次調査

今回の調査では、中心伽藍の北側にも礎石を使用した建物をはじめ複数の建物が建ち並んでいたことがわかり、伽藍を復元するための重要な成果となりました。

安倍寺跡 第23次調査の出土遺物

柱穴出土の瓦などが展示されていました。

藤原京関連遺跡 第72次調査

第72次調査は大福駅から北西に約450m、大字西之宮において行われた調査です。調査の結果、藤原京期の溝や土杭、縄文時代後期中葉の遺物がみつかりました。

藤原京関連遺跡 第72次調査

縄文時代後期中葉の遺物の中では、縄文土器が一番多く見つかっています。

藤原京関連遺跡 第72次調査の出土遺物

これに加え、分銅形土偶2点と土版1点が共伴して出土するなど重要な発見がありました。

分銅型土偶は、破片も含め、近畿でも10例ほどしかない貴重なものになります。それが同じ場所から2点もみつかるのは非常に珍しいことです。

土偶は一般的に破片でみつかることが多いですが、今回は2点とも完全な形で、頭部を天に向けた状態と、

分銅形土偶1

頭部をほぼ北に向けうつ伏せに寝かされた状態で出土しています。これは土偶の使用法を考える上でも重要な事例といえます。

分銅形土偶2

分銅形土偶

土偶というと、宇宙人のような「遮光器土偶」や「みみずく土偶」などの装飾が豊かで立体的なものをイメージしますが、こうした頭から足の先までの表現がある人形土偶は東日本で発達した土偶です。展示品は東部や手足の表現が無く、側面両側の中央がくびれる特徴を持つ粘土板状の「分銅形土偶」と呼ばれるもので、愛知県から熊本県の西日本に分布しています。

ポスターに使用されているのは分銅形土偶の写真でした。

玄関前に掲示された「50㎝下の桜井」のポスター

写真の左側が、頭部を天に向けた状態で出土した分銅形土偶です。乳房と正中線、その正中線から放射状にのびる妊娠線を表現した単純な人体を表現したものです。土偶の頭頂部には一条の溝と、穴があけられていました。穴は胴部下半にもあけれており、これらは人体でいう「おへそ」を表現したものと考えられます。土偶としてしっかり表現されていることがわかります。

写真の右側が、うつ伏せに寝かされた状態で出土した土偶です。この土偶は分銅形を保ちながらも、乳房の表現が欠落した線だけの装飾があるものです。土版の表現に近くなったものと考えられます。

完全な形で出土した珍しい分銅形土偶を、実際に見られたのは貴重な経験でした。

城島遺跡 第55次調査

第55次調査は遺跡の東部で実施されました。周辺の調査では初瀬川旧流路の範囲が確認されており、旧地形の復原がされています。調査地内でも北へ向かい田畑が落ちていき、初瀬川旧流路の影響を受けていると考えられました。

城島遺跡 第55次調査

これまで、主に遺跡西側に古墳時代中・後期の遺構や遺物が集中していることがわかっていました。今回の調査では、遺跡東側にも古墳時代後期の竪穴建物が存在していることがわかり、周辺にも同様の遺構が広がると予想されます。

城島遺跡 第55次調査の出土遺物

また、第2トレンチで旧流路の端を検出し、現状の地割が初瀬川の旧流路を反映していることを改めて確認することができました。

戒重城跡 第1次調査

戒重城は桜井駅の西約800m、大字戒重に所在し、南北朝に戒重(三輪)西阿によって築かれたものです。暦応4年(1341年)の攻防を伝える軍忠状によれば周囲を塀で囲み、さらに塗塀や高櫓を設けていたようです。また、土塁上には竹が植えられ、「竹城」とも呼ばれていたようです。

戒重城跡 第1次調査

今回の調査地は、戒重陣屋図に「御物見」「御土蔵」と記された場所にあたります。見つかった土杭や溝、柱穴、石組遺構から、16世紀以降と考えられる土器片・瓦などが出土していることから、戒重陣屋に関連する遺構の可能性があります。

戒重城跡 第1次調査の出土遺物

現在、戒重城跡は耕作地や宅地などに利用され、その全体像はよくわからない状態ですが、地割などには今でもわずかに痕跡を残しています。今後の調査で内部構造について明らかになることが期待されます。

藤原京関連遺跡 第73次調査

第73次調査は、大福駅から西北西に約760m、大字西之宮においておこなわれました。今回の調査地は、藤原京の条坊復元図に当てはめてみると、東五坊大路が通っているところにあたります。

藤原京関連遺跡 第73次調査

調査の結果、藤原京期の溝2条と柱穴4基が確認されました。2条の溝は南北方向に平行してみつかっています。東五坊大路の道路側溝と考えられます。

藤原京関連遺跡 第73次調査の出土遺物

藤原京関連 第74次調査

第74次調査は、近鉄大阪線の大福駅から南東に100mほどの場所で行われました。

藤原京関連 第74次調査

調査の結果、道路の側溝と考えられる東西方向に掘られた2条の平行する溝と、南北方向に掘削された中世以降の耕作にともなう素掘り溝が検出されました。

藤原京関連 第74次調査の出土遺物

橿原市藤原京資料室

「藤原京」は、中国の都城制にならった初の本格的都城で、京域は東西十坊の範囲まであり、藤原宮を中心に大和三山が入る約5キロメートル四方の広大なものであったことが、これまでの調査でわかっています。

「橿原市藤原京資料室」に展示されている、1000分の1の模型です。

橿原市藤原京資料室の藤原京の模型

橿原市の史跡を巡る【橿原市藤原京資料室】圧巻の巨大模型で藤原京を学ぶ~藤原宮跡周辺を歩くその5

圧巻の巨大模型は、いつまでも見ていたくなるほどの大変素晴らしいものです。藤原京の広大さと、碁盤の目のような整然とした街区に区画されている様子に驚きます。

このような精巧な模型が造られるほどに、藤原京の様子が分かっているのは、今回「桜井市立埋蔵文化財センター」で見学したような、地道な発掘調査の成果なんですね。

「桜井市内では、小規模な調査がほとんどですが、このような成果を積み上げていき藤原京のより具体的な姿を明らかにしていければと思います」と解説がありました。

今後の調査に注目し、次回の展示も見に行こうと思っています。

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桜井市立埋蔵文化財センターへのアクセス

アクセス

奈良県桜井市芝58-2

近鉄・JR桜井駅下車、天理駅行バスで 三輪明神参道口下車、北へ徒歩2分
JR三輪駅下車、徒歩西へ10分

無料駐車場あり

利用案内

住所: 奈良県桜井市芝58-2
電話: 0744-42-6005
休館日: 月火(祝日の場合開館)、祝日の翌日
開館時間: 9:00 – 16:30
入館料: 企画展・速報展 200円、特別展 300円(小中学生は半額)

次の場合は入館料が無料になります。

  • 未就学児童
  • 市内在住の小・中学生
  • 障害者手帳所持者(障がい者1名につき、介添の方1名無料)

常設展示の模様はこちらの記事でご紹介しています。

特別展の日程など、詳しくは桜井市の公式サイトをご覧ください。
市立埋蔵文化財センター/桜井市 (sakurai.lg.jp)

最後までお読み頂きありがとうございます。