【山の辺の道の歌碑めぐり】神武天皇が皇后との出会いを詠んだ歌『古事記』より(奈良県桜井市)

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景色を楽しみながら歌碑を訪ね歩き、いにしえの歌人の思いに触れるのが好きなみくるです。

日本最古の道「山の辺の道」には38基もの歌碑が建てられています。全部を見つけたいと思っています。

観光パンフレット「山の辺の道」

今回は、観光パンフレット「山の辺の道」に掲載されている中から、32番の神武天皇じんむてんのうの歌碑をご紹介します。

神武天皇が、のちに皇后となる伊須気余理比売命いすけよりひめのみことと初めて一夜を共にした際の情景を詠んだ歌です。

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あし原の しけしき小屋をやに すがたたみ

神武天皇と伊須気余理比売命の物語

今回ご紹介する歌碑は、山の辺の道を流れる狭井川さいがわの近くに建っています。

奈良県桜井市を流れる狭井川

狭井川は、奈良県桜井市三輪を流れる川で、奈良盆地の南東部に位置する三輪山の麓を流れています。

神武天皇の皇后である伊須気余理比売命(いすけよりひめのみこと)の家がこの川のほとりにあったとされ、神武天皇が彼女を訪れた際に、川辺にヤマユリが多く咲いていたことから「佐韋河(狭井川)」と名付けられたと伝えられています。※「さゐ」はヤマユリの古名です。

こちらの記事では、狭井川と、近くの出雲屋敷(狭井川のほとり、神武天皇聖跡 狭井河之上顕彰碑)に伝わる、神武天皇伊須気余理比売命の出会いの物語をご紹介しています。

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『古事記』に出てくる神武天皇の歌

神武天皇が皇后との出会いを詠んだ歌

今回ご紹介する神武天皇が詠んだ歌は、『古事記』に出てくる歌です。

神武天皇が皇后との出会いを詠んだ歌
神武天皇が皇后との出会いを詠んだ歌

(原文)
阿斯波良能 志祁志岐袁夜邇
須賀多多美
伊夜佐夜斯岐弓 和賀布多理泥斯

(読み下し)
葦原あしはらの しげしき小屋をや
菅畳すがたたみ 

いやさやきて が二人寝し
『古事記』中巻 神武天皇
揮毫者 北岡 寿逸 

(現代語訳)
葦が生い茂る野原にある粗末な小屋で、すげで編んだ清らかな畳を何枚も敷き重ねて、私たち二人は共に寝たことだったね。

(語義)
しけしき…「荒れた、汚い」といった意味合いがあります。当時の天皇の立場からすると、粗末な場所で一夜を過ごしたことを表現しています。

すがたたみ…ワラなどで作られた敷物で、敷き布団の原型とも言われています。

いやさや…「いよいよ清らかに」「何枚も」といった意味合いで、粗末な小屋でありながらも、清らかに整えた様子を表しています。

この歌は、神武天皇が東征の後、橿原の地で即位し、大久米の進言によって、狭井川のほとりで出会った伊須気余理比売命と一夜を過ごしたことを、後に宮中に迎え入れた際に回想して詠んだものです。

神武天皇と伊須気余理比売の親密な関係と、二人の出会いの情景をロマンチックに描き出しています。質素な場所での一夜を、清らかで心に残るものとして回想している点に、天皇の愛情が感じられる歌です。

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揮毫者の北岡 寿逸氏について

桜井市にある歌碑は、昭和46年当時の桜井市長と桜井市出身の文芸評論家、保田與重郎氏を中心に「心ある人々に記紀万葉のふるさとと桜井の歴史を体感し楽しんでいただこう」という思いで呼びかけられ多くの文化人に賛同をいただき揮毫されたものです。 

北岡 寿逸(きたおか じゅいつ)氏は、日本の労働官僚であり、経済学者です。1894年(明治27年)に奈良県吉野町で生まれ、1989年(平成元年)に亡くなりました。日本の労働政策や経済学の分野で活躍し、多くの著書も残しています。政治学者の北岡伸一氏の大叔父にあたります。

北岡寿逸氏と『古事記』との直接的な学術研究や著述における関連は見当たりませんが、出身地である奈良県吉野町は、神武天皇の東征において重要な通過点であることから、歌碑の揮毫を依頼されたのかもしれません。

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歌碑「あし原の しけしき小屋をやに 」へのアクセス

山の辺の道沿いにある「月山記念館」から北へ10mほど歩くと、石畳と石造のベンチがある小広場があります。

歌碑がある石畳と石造のベンチがある小広場

歌碑は、広場の石垣の上の山裾に、三輪山を背に西面して建っています。

歌碑がある石畳と石造のベンチがある小広場

小広場の前には、「神武天皇聖蹟」の場所を示す案内板が建っています。

「神武天皇聖蹟」の場所を示す案内板

神武天皇聖蹟の位置はグーグルマップに示されています。

奈良県桜井市茅原「神武天皇聖蹟 狹井河之上顕彰碑」

こちらの記事では、神武天皇の歌碑が建つ小広場からほど近い貴船神社きふねじんじゃをご紹介しています。

貴船神社は、奈良県桜井市の大神神社の境外末社のひとつで、水の神である淤加美神おかみのかみを御祭神としています。磐座をご神体とするパワースポットです。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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