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奈良県立図書情報館で古代の息吹を体感!里中満智子展と「踏みしめてお帰り下さい」の重み

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里中満智子の『天上の虹』がきっかけで、『万葉集』と古代史が好きになったみくるです。

『天上の虹―持統天皇物語―』は、里中満智子先生の壮大なライフワークです。

この作品を通じて、私は万葉歌の情景の美しさ、そして飛鳥・藤原京という舞台で繰り広げられた皇族たちの愛と葛藤に魅せられ、古代史そのものへの興味を深めることとなりました。

里中先生が描き出す、歴史の記録からこぼれ落ちた人々の感情や、定説を覆す大胆な解釈は、まさに歴史のロマンそのものです。そんな大好きな先生の功績と作品世界に触れられる、奈良県立図書情報館の開館20周年記念「里中満智子展」。この展示は、長年のファンである私にとって、特別な意味を持つ「聖地巡礼」となりました。

この記事では、展示の魅力はもちろんのこと、現地で上映されていたトークショーで明かされた「悪女」持統天皇を選んだ理由や、私が個人的に巡っている万葉歌碑巡りと作品がどう繋がったのか、そしてこの奈良の地が持つ歴史の重みについて、熱く語りたいと思います。

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奈良県立図書情報館の開館20周年記念「里中満智子展」

古代への旅の始まり

「里中満智子展」訪問の動機と感動

私の古代史への探求は、里中満智子先生のライフワーク『天上の虹―持統天皇物語―』との出会いから始まりました。

足掛け32年の歳月をかけ、奈良時代を女性の視点、特に持統天皇の視点から描き切ったこの大長編は、私を『万葉集』の世界、そして飛鳥・藤原京のロマンへと導いてくれました。

里中先生が描き出す、歴史の記録からこぼれ落ちた人々の感情と、定説を覆す大胆な解釈は、私の歴史観そのものを形作ってくれたと言っても過言ではありません。

それだけに、この奈良の地で、大好きな先生の功績と作品世界に触れる機会が訪れたのは、長年のファンとして最高の喜びでした。特に、展覧会の関連企画として開催された先生のトーク+サイン会に参加したいと強く願いましたが、すぐに定員に達し受付が終了した為、参加が叶いませんでした。

しかし、会場である奈良県立図書情報館は、ファンに素晴らしいサプライズを用意してくれていました。2階のメインエントランスホールに設置された展示会場では、なんと、その幻のトークショーの様子がテレビ画面でループ再生されていたのです!

先生の肉声で、作品の裏側や歴史への考察を聞けた瞬間、諦めていた分も感動が込み上げ、この場に来られたことを心から感謝しました。

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展覧会の概要

この特別な企画は、奈良県立図書情報館の開館20周年記念として開催されました。会場は2階のメインエントランスホールです。

当初の予定から好評につき会期が延長されるほどの大きな反響を集めました。

展示は『天上の虹』の美しいな表紙絵を中心に構成され、古代史のドラマを鮮やかに彩る先生の筆致を間近で堪能することができました。

私が持っているのは講談社文庫版なので、初めて拝見する表紙絵もあり、大きく展示された作品に魅入りました。

裏面には名場面が抜き出し紹介されていて、作品を思い出しては感動に浸る時間となりました。

奈良という土地への里中先生の深い愛と情熱が、隅々まで詰まった企画であり、この展示そのものが、先生の奈良での活動の集大成となっているように感じられました。

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「里中満智子展」開催情報

  • 会場:奈良県立図書情報館 2階 メインエントランスホール
  • 会期:2025年11月1日(土)~11月30日(日)
    ※当初は11月16日までの予定でしたが、好評につき会期が延長されています。
  • 開館時間:9:00~20:00
  • 休館日:11月4日(火)、11月10日(月)
  • 入場料無料
奈良県立図書情報「里中満智子展」

奈良県立図書情報館については、こちらの記事でご紹介しています。

館内には、資料閲覧室のほか、情報検索コーナー、展示ギャラリー、セミナールームやカフェスペースも整備されています。

また、自動販売機が設置されている飲食スペースもあり、軽食やドリンクを取りながらひと息つくこともできます。静かで落ち着いた空気の中に、長時間ゆっくりと過ごせるやさしい雰囲気が漂っていました。

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トークショーの核心「里中満智子先生の歴史観に触れる」

「悪女」持統天皇を選んだ理由

会場で見たトークショーの映像は、作品の背景にある里中先生の歴史観を鮮烈に伝えてくれました。

中でも印象的だったのは、大長編の主人公として持統天皇を選んだ理由です。

持統天皇は、実の息子である草壁皇子(くさかべのみこ)を次期天皇にしたいがために、才能に溢れ人気も高かった大津皇子(おおつのみこ)を死に追いやったとされ、歴史上「悪女」というレッテルを貼られがちです。先生は、まさにこの「悪女」とされている点にこそ惹かれたと言います。

「悪女と言われているからこそ、彼女なりの思いを描きたかった」

里中先生は、単純な権力欲や嫉妬ではなく、未来の律令国家を目指す女帝の使命感、そしてわが子を次代の礎としたい母としての葛藤があったのではないかと深く掘り下げます。

さらに、主人公の条件として「誕生から死までがちゃんと分かっていて、生涯を描ける人物が良かった」と語られていたのも、壮大な歴史物語を描き切る上での説得力ある理由でした。

歴史の記録の「裏側」にある、一人の女性・母・政治家としての持統天皇の姿に焦点を当てたからこそ、この作品は多くの読者を惹きつけているのです。

展覧会の様子は、奈良県立図書情報の公式サイトで公開されています。

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脇役たちの情熱と人間性

トークショーでは、壮大な権力闘争の陰で展開された、脇役たちの情熱的な人間模様にも焦点が当てられました。

記憶に残っているのは、壬申の乱で天武天皇側についたにもかかわらず、親しい大津皇子を裏切った川島皇子の複雑な立場が描かれていることです。文武両道に優れた大津皇子は、現在でも高く評価されていて、ファンが多い人物です。それだけに、川島皇子が一方的に悪く言われてしまい…でも、彼には彼なりの想いがあったのだと、里中先生は想像されています。

そして、情熱的な恋に生きた紀皇女(きのひめみこ)但馬皇女(たじまのひめみこ)のエピソードです。皇女たちの燃えるような愛の激しさを語る中で、先生はユーモラスに「詰め寄られるとタジタジしちゃって、逃げちゃうのが男性なのね」と仰っていました。

これは、時代を超えて普遍的な男女の機微であり、権威的な古代の物語の中に、現代の私たちと変わらない生々しい感情が流れていたことを教えてくれます。脇役たちの詳細なエピソードに光を当てることで、里中先生は古代の宮廷を、単なる歴史の舞台ではなく、血の通った人間たちのドラマの場として再構築しているのです。

お話を聞きながら、『天上の虹』のあとがきに書かれていた「誰のことも悪く書きたくない。みんな悩み苦しみながら精一杯生きたのだ。それは現在の私達と同じ」という言葉を思い出していました。
先生の深い愛情がひしひしと伝わります。

トークショーの映像は(約60分)は、「里中満智子展」の会場内でループ再生されています。

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飛鳥と作品が交差する「個人的なロマン」

紀皇女と橿原の歌碑

里中満智子先生のトークショーで感動したエピソードは、私の地元である奈良の風景と深く結びついています

特に、情熱的な恋に生きた紀皇女(きのひめみこ)の存在は、橿原市民として特別な感慨があります。私が住む奈良県橿原市にある石川池(剣池)の畔には、彼女が詠んだ万葉歌碑が建っているのです。

紀皇女は天武天皇の皇女でありながら、史実の記録が極端に少ない人物です。

『天上の虹』では、この「記録の空白」こそがドラマの源泉となります。作品は、彼女が持統天皇の息子・草壁皇子の妻でありながら、弓削皇子(ゆげのみこ)と密通し、その醜聞が女帝の政治的権威を傷つけないよう、持統天皇によって記録を意図的に排除されたという、衝撃的な仮説を打ち立てます。

紀皇女のように、歴史に「悪女」とされ、あるいは歴史から「消された」人物に、里中先生は確固たる感情と命を吹き込みます。この大胆な解釈こそが、『天上の虹』という作品の真骨頂であり、私たちが歌碑の前で感じるロマンを、何倍にも膨らませてくれるのです。

こちらの記事では、紀皇女の万葉歌碑と、石川池(剣池)の景観をご紹介しています。

「軽の池のほとりを泳ぎ回る鴨でさえ、玉藻の上にひとり寝ることはないというのに」と、歌に詠まれたように、玉藻が浮かぶ水面を泳ぐ鴨の姿が目に浮かぶようです。

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歌聖・柿本人麻呂への熱い思い

もう一人、私が『天上の虹』を通じてファンになったのが歌聖・柿本人麻呂です。彼は、持統天皇の宮廷歌人として、この時代の輝きと悲劇を歌として後世に伝えました。

里中満智子さんに聞く万葉集の魅力 – ほぼ日刊イトイ新聞

里中先生は、彼に持統天皇の初恋の相手、有間皇子(ありまのみこ)にそっくりというロマンティックな設定を与えました。

里中満智子さんに聞く万葉集の魅力 – ほぼ日刊イトイ新聞

これは、公の顔を持つ持統天皇の、心の奥底にある女性としての寂しさや未練を揺さぶる、作品構造上の天才的な仕掛けです。柿本人麻呂の存在は、単なる歌人ではなく、持統天皇にとって私的な感情を吐露できる唯一の窓口として機能していたのです。

個人的に最も感動したシーンは、悲劇的な運命をたどる十市皇女が大友皇子に嫁ぐ際、想い人であった高市皇子が嘆き悲しむのを、柿本人麻呂がそっと慰める場面です。

彼は、公的な記録には残らない人間の弱さや悲しみに寄り添い、それを歌という永遠の形に昇華させました。多くの歌を集めて後世に繋いだことからも、彼は情に厚く、生きた人々の感情を大切にした人物だったと確信しています。

こちらの記事では、柿本人麻呂の挽歌をご紹介しています。

里中先生も大好きと仰る、明日香村の美しい景色が望める場所に建つ歌碑です。

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「場所の力」と歴史の継承

講演会場の足元にある歴史

今回の展覧会が開催された奈良県立図書情報館の場所にも、深い歴史のロマンが隠されていました。トークショーの終盤で、里中先生は衝撃的な事実を教えてくれました。この図書館が建つ敷地は、奈良時代に絶大な権勢を誇った藤原仲麻呂(ふじわらのなかまろ、後の恵美押勝)の広大な邸宅跡の一部にかかっているというのです。

仲麻呂は、持統天皇の曽孫にあたり、里中先生の別の作品『女帝の手記』でもその権力闘争が詳しく描かれている重要人物です。

隣接する小学校まで含めた広大な敷地だったという話は、当時の仲麻呂の権力の巨大さを物語っています。

そして先生は、講演の最後に参加者へ向けて「(この土地を)踏みしめてお帰り下さい」と仰いました。この言葉は、私たちが今立っている現代の床の下には、遥か千数百年前の皇族や権力者たちの生きた証が眠っている、という事実を突きつける、重みのあるメッセージでした。

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飛鳥の「そのままの地形」という奇跡

この「場所の力」を感じるメッセージは、私が愛してやまない飛鳥の魅力とも深くリンクしています。里中先生もトークで、明日香の何が素晴らしいかといえば、「当時の地形がそのまま保存されていること」だと力説されていました。

大規模な開発を免れた飛鳥には、大津皇子や高市皇子、持統天皇らが実際に歩き、詠んだ景色がそのまま残っています。万葉歌に詠まれた山々や川の様子が目の前に広がっているのを見ると、「あの時の彼らが、この景色を見たのかも」と妄想が膨らみ、胸が熱くなります。

私が万葉歌碑巡りをするのは、まさにこの「時空を超えた連続性」を体感したいからです。里中先生の作品は、その風景の中に生きた人々の感情を補完し、歌碑を巡る喜びを何倍にも増幅させてくれるのです。

こちらの記事では、持統天皇の歌碑をご紹介しています。「百人一首」にも収載された有名な歌です。

大和三山(天香具山、畝傍山、耳成山)が望める場所に建っています。

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場所の力と歴史の継承

私が万葉歌碑巡りをするのは、まさにこの「時空を超えた連続性」を体感したいからです。里中先生の作品は、その風景の中に生きた人々の感情を補完し、歌碑を巡る喜びを何倍にも増幅してくれるのです。

そして、この古代のロマンが今に残っている奇跡は、偶然ではありません。実は私自身、「飛鳥・藤原まるごと博物館検定」の学習を通して、遺跡の発掘・保存に尽力された人々や、歴史を次代へ繋ぐための活動の足跡に触れる機会を得ています。

だからこそ、図書館の3階ブリッジで展開されていた展示「飛鳥・藤原京をまもった人々」を目にしたとき、特別な感動を覚えました。

私たちが「そのままの地形」として感動する景色は、その土地を愛し、守り、発掘し、記録し続けた無数の人々の情熱と努力の結晶なのです

この展示に触れたことで、里中先生の描く壮大な物語は、現代を生きる私たちの「継承の責任」というテーマと、より深く繋がったのでした。

「飛鳥・藤原まるごと博物館検定」については、こちらの記事でご紹介しています。

世界遺産登録を目指すこの地域の豊かな歴史と文化を体系的に学べるこの検定に、私は第1回から挑戦し続けており、第1回検定で「初級」に、第2回検定で「中級」に合格しています。

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まとめ:里中先生からのメッセージ

里中満智子展は、単なる原画の鑑賞に留まらず、奈良という土地が持つ歴史の重み、そしてそのロマンを守り伝えてきた人々の存在まで感じさせてくれる、極めて貴重な時間となりました。

講演会の最後に里中先生が仰った「(この地を)踏みしめてお帰り下さい」という言葉は、だからこそ深く、私の胸に響きました。

これは、藤原仲麻呂の屋敷跡という歴史の上に立つ私たちに対し、「古代のロマンをただ物語として消費するのではなく、生きた足跡としてその重みを背負い、現代を歩んでほしい」という、先生からの壮大なメッセージだったのでしょう。

この得難い経験を通じて、古代史への愛と万葉歌の情景への理解は、さらに深まりました。里中先生への感謝とともに、これからも私は、この奈良の地を踏みしめ、歴史の謎とロマンを追いかけていきたいと思います。

奈良県立図書情報館の基本情報とアクセス

基本情報

  • 所在地:奈良県奈良市大安寺西1丁目1000番地
  • 電話番号:0742-34-2111
  • 開館時間:9:00~20:00
  • 休館日:月曜日(祝日の場合は翌平日)、毎月末日、年末年始(12月28日~1月4日)ほか臨時休館あり
  • 入館料:無料(イベント・会議室など一部有料施設あり)
  • 公式サイト奈良県立図書情報館公式サイト

アクセス

奈良県奈良市大安寺西1丁目1000

公共交通機関:

  • JR奈良駅、近鉄新大宮駅などから奈良交通バス「県立図書情報館行き」で終点下車、徒歩すぐ
  • 近鉄新大宮駅から徒歩約21分
  • JR奈良駅 東口から徒歩約23分

車: 西名阪道郡山ICから約20分。

駐車場あり(普通車311台)

奈良県立図書情報館の駐車場

駐車場料金:100円/1時間(最初の1時間は無料)

奈良県立図書情報館の駐車場の利用案内

最後までお読み頂きありがとうございます。

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