【桜井の記紀万葉歌碑】大神神社が酒造りの神として敬われる由縁となった活日の歌(奈良県桜井市)

※当サイトではアフィリエイト広告を利用しています。

景色を楽しみながら歌碑を訪ね歩き、いにしえの歌人の思いに触れるのが好きなみくるです。

「桜井市役所 観光まちづくり課」さんが発行されている観光パンフレット「さくらい六街道巡り歩く」には、63基もの「桜井の記紀万葉歌碑」が掲載されています。

観光パンフレット「さくらい六街道巡り歩く」

今回はその中から、63番の歌をご紹介します。『日本書紀』巻5・崇神天皇の条にある活日いくひが詠んだ歌をです。

スポンサーリンク

この神酒はわが神酒ならず倭なす

大神神社の活日の歌碑

活日の歌碑は、奈良県桜井市の大神神社おおみわじんじゃの境内の宝物収蔵庫に向かつて左側の木立の中に建っています。

大神神社の歌碑ひろば(遠景)
大神神社の歌碑ひろば(近景)

宝物収蔵庫は、境内マップ11番、祈祷殿の向かいにあります。

大神神社の境内マップ
境内マップ | 大神神社(おおみわじんじゃ)

活日の歌碑です。

大神神社の活日の歌碑

(原文)
許能瀰枳破 和餓瀰枳那羅孺 椰磨等那殊
於朋望能農之能 介瀰之瀰枳
伊句臂佐 伊久臂佐

『日本書紀』巻5・崇神天皇 活日

(読み下し)
この神酒みきは わが神酒ならず
やまとなす 大物主おおものぬしみし神酒
幾久幾久いくひさいくひさ

(現代語訳)
この神酒はわたしが造った神酒ではありません。倭の国をお造りになった大物主大神が醸されたお酒です。幾世までも久しく栄えませ、栄えませ。

揮毫は、元武庫川女子大学教授の和田嘉寿男氏です。万葉集を研究。『大和の万葉歌』『万葉から古今へ』など著書多数。

スポンサーリンク

『日本書紀』巻5・崇神天皇

大物主大神おおものぬしのかみを厚く敬った崇神天皇すじんてんのうは神に捧げる御酒を造るために、高橋邑の活日いくひ掌酒さかひと(神に酒を捧げる役)に任じました。

『日本書紀』巻5・崇神天皇の条に次のようにあります。

(崇神天皇)即位8年夏4月16日。高橋邑の活日を大神の掌酒としました。

冬12月20日。天皇は大田々根子おおたたねこ大神おおみわのかみを祀らせました。この日、活日が自ら神酒みわを捧げて、天皇に献上し、歌を歌いました。

この神酒みきは わが神酒ならず
やまとなす 大物主おおものぬしみし神酒
幾久幾久

このように歌い、神宮かみのみやとよあかりをしました。すぐ宴は終わって、諸大夫マヘツキミタチ(役人)が歌を歌いました。

味酒うまさけ 三輪の殿との
朝門あさとにも 出でて行かな
三輪の殿門とのと

(歌の現代語訳)
美味しい酒のある三輪神社の社で、朝が来るまで酒を飲んで、朝が来たら帰ろう。三輪の社の門から。

それで天皇も歌を歌いました。

味酒 三輪の殿の
朝門にも 押し開かね
三輪の殿門を

(歌の現代語訳)
美味しい酒のある三輪神社の社で、朝が来るまで酒を飲んで帰りなさいな。三輪の社の門を押し開いて。

神宮の門を開いて、天皇は帰りました。この大田々根子は今の三輪君みわのきみなどの始祖です。

このように『日本書紀』には、大物主神のご神助により、会心の美酒を造ることが出来たことが記されています。このことからご大神神社の祭神が酒造りの神として敬われることとなりました(大神神社のご祭神は大物主大神おおものぬしのおおかみです)。

額田王が三輪山に祈りの言葉を捧げる歌

三輪の枕詞は「味酒(うまさけ)」で、額田王ぬかたのおおきみの歌をはじめ「味酒うまさけの三輪」は万葉集にも詠まれました。

(読み下し)
うま酒 三輪の山 
あをによし 奈良の山の 山際に 
い隠るまで 道の隈 い積もるまでに
つばらにも 見つつ行かむを 
しばしばも 見放けむ山を 情なく 
雲の 隠さふべしや

万葉集 巻1-18 額田王

(現代語訳)
味酒の三輪の山を
青土の美しい奈良の山々の間に
隠れてしまうまで何度でも
道の曲がり角ごとにしみじみと
振り返って見てゆこうと思っているこの山を
心なくも雲よ どうか隠さないでいてね

額田王の歌は、「今西酒造」さんの公式サイトで「額田王の代表的な歌」として紹介されています。

今西酒造さんは、三輪山が古来より「三諸山みむろやま」と呼ばれている事、 また、三輪山は「杉」に神様が宿るとされている事から360有余年「三諸杉みむろすぎ」という銘柄で酒造りをされてきた、三輪に現存する唯一の酒蔵です。

スポンサーリンク

大神神社のご神木と杉玉

大物主大神おおものぬしのおおかみは酒の神、三輪といえば美味なる酒を古代の人々は想起したのでしょう。そして、大神神社のご神木は杉で、古来神聖なものとされてきました。

大神神社の御神木「巳の神杉」
大神神社の御神木「巳の神杉」

やがて時代が下がって、酒の神である大物主大神の霊威れいいが宿る杉の枝を酒屋の看板とする風習が生まれ、軒先に酒ばやし(杉玉)を吊るすようになりました。

今西酒造本店
今西酒造本店

醸造安全祈願祭(酒まつり)

大神神社では、毎年11月に「酒の神様」「醸造の祖神」と仰がれるご祭神のご神徳を称えて、拝殿において「醸造安全祈願祭(酒まつり)」が斎行されます。

祭典後より全国の酒造家に御神木である三輪山の杉で奉製された「しるしの杉玉」が、酒づくりのお守りとして授けられ、酒蔵などの軒下に吊り下げられます。
またこのお祭りに合わせて、拝殿と祈祷殿の「大杉玉」(直径約150センチ・重さ約200キロ)も今月8日に掛け替えられました。
お祭りには、関西を中心に全国より酒造関係者が参列され、4人の巫女による神楽「うま酒みわの舞」が奉奏されました。

今回ご紹介した活日の歌「このみきは わがみきならず やまとなす おおものぬしの かみしみき
いくひさ いくひさ」は、この神楽舞の歌詞になっています

大神神社摂社 活日神社

崇神天皇に召され、三輪の神様にお供えする酒を造った高橋邑の活日は、高橋活日命たかはしのいくひのみこととして大神神社摂社の活日神社にお祀りされ、杜氏の祖先神として酒造関係者からの信仰を集めています。

大神神社摂社 活日神社
スポンサーリンク

大神神社へのアクセス

奈良県桜井市三輪1422

無料駐車場あり

JR桜井線(万葉まほろば線)三輪駅より 徒歩5分
JR桜井線・近鉄大阪線 桜井駅 北口2番乗り場より シャトルバスで約20分

こちらの記事では、観光パンフレット「さくらい六街道巡り歩く」に掲載されている「桜井の記紀万葉歌碑」についてご紹介しています。

最後までお読み頂きありがとうございます。

スポンサーリンク
PAGE TOP
タイトルとURLをコピーしました