【古代史ロマン!】物部氏の記憶が眠る地「杣之内古墳群」を巡る(奈良県天理市)

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古墳を見て歩きながら、古代に想いを馳せるのが好きなみくるです。

奈良盆地の東縁に位置する天理市。この地は、ヤマト王権の形成期を物語る古墳が数多く点在する、まさに“古墳の宝庫”とも言えるエリアです。

▼なら歴史芸術文化村からの眺め▼
東乗鞍古墳、西乗鞍古墳などが見渡せる

ら歴史芸術文化村からの眺め。東乗鞍古墳、西乗鞍古墳などの景色を一望

石上神宮を中心とした布留の地には、4世紀から7世紀にかけて築かれた古墳が集中していて、その数と質の高さは全国的にも注目されています。

そんな天理市の古墳群の中でも、今回は特に重要な意味をもつ「杣之内古墳群(そまのうちこふんぐん)」をご紹介します。

この古墳群は、物部氏ゆかりの首長墓が集中する特異なエリアであり、古代日本の権力構造や豪族のあり方を知る手がかりにもなる貴重な場所です。

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杣之内古墳群の特徴と見どころ

杣之内古墳群とは?

杣之内古墳群(そまのうちこふんぐん)は、奈良県天理市の杣之内町・勾田町・乙木町にかけて広がる古墳群で、確認されている古墳の数は40基以上にのぼります。古墳時代前期から終末期にかけて築かれていて、特に4〜6世紀の大型前方後円墳・前方後方墳が顕著です。

西乗鞍古墳の説明板

注目すべきは、この一帯が布留遺跡(ふるいせき)の南に隣接しているという点です。布留は、ヤマト王権の成立において軍事・祭祀の中核を担ったとされる物部氏の本拠地と考えられており、彼らの墓域、つまり「奥津城(おくつき)」であった可能性が高いとされています。

古墳の築造年代、墳形、埴輪・石棺の種類や出土位置、さらには周濠や外堤の有無などの観察を通じて、当時の政治的背景や権力構造の変遷を読み解くことができる、非常に興味深い遺構群です。

西山古墳の説明板

また、墳丘に登ることが可能な古墳も複数あり、現地での視点や空間認識を通じた考察も可能です。考古学的・歴史的な価値だけでなく、フィールドワークの素材としても非常に優れた地域と言えるでしょう。

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古墳群の構成と特徴

この広大な古墳群には、国の史跡に指定されているものも含め、多くの古墳が点在しています。今回はその中でも特に代表的な古墳をいくつかご紹介しましょう。

西山古墳

西山古墳(にしやまこふん)は、古墳時代前期(4世紀後半)に築造された、全長約183mを誇る日本最大級の前方後方墳です。一般的な前方後円墳とは異なる独特の形をしていて、その規模と珍しさから国の史跡にも指定されています。一歩足を踏み入れると、その壮大さに圧倒されることでしょう。

西山古墳

西乗鞍古墳

西乗鞍古墳(にしのりくらこふん)は、古墳時代後期(5世紀末から6世紀前半)に築造された、全長約118mの大型前方後円墳です。杣之内古墳群の南部では最大の古墳で、東乗鞍古墳・小墓古墳とともに一群を形成しています。平成30年(2018年)に国史跡に指定されました。墳丘頂上まで登ることができ、桜の名所としても知られています。

西乗鞍古墳

東乗鞍古墳

東乗鞍古墳(ひがしのりくらこふん)は、全長約75mの前方後円墳です。6世紀前半頃の築造と推定されています。
横穴石室が開口していて、玄室内には阿蘇ピンク石の石棺が据えられています。

東乗鞍古墳

小墓古墳

小墓古墳(おばかこふん)は、全長80.5メートル(推定復元85メートル以上)の前方後円墳です。6世紀前半頃の築造と推定されています。埋葬施設は明らかにされていません。

小墓古墳
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物部氏と杣之内古墳群

杣之内古墳群は、布留遺跡の範囲内に位置し、鉄製武器・武具の出土が多いことから、軍事的色彩を帯びた氏族の存在がうかがえます。物部氏は、武器製造や神宝の管理を担ったとされる一族であり、ヤマト王権内における軍事部門を司っていました。

物部氏の祭祀拠点とされる石上神宮がすぐ北にあり、そこに奉納された武具類とも通底する文化的背景が、杣之内古墳群からもうかがえます。

石上神宮の鳥居
石上神宮の鳥居

奈良県天理市に鎮座する石上神宮は、日本最古の神社のひとつとして知られる古社です。物部氏の総氏神であり、健康長寿や厄除け、病気平癒にご利益があるとされています。境内はうっそうとした常緑樹に囲まれ、神さびた自然の姿を今に残しています。

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豊かな自然環境と景観

古墳群は天理市の穏やかな田園風景の中に点在し、地形の起伏を活かして築造されています。墳丘の形状や周濠の配置から、地勢を利用した計画性の高さがうかがえます。

杣之内古墳群を歩く
杣之内古墳群を歩く

また、墳頂からは奈良盆地の眺望を楽しむことができ、古代首長たちがこの地を選んだ理由を実感させられます。自然との調和が感じられる点も、杣之内古墳群の魅力の一つです。

西乗鞍古墳の墳丘からの景観
西乗鞍古墳の墳丘からの景観
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古墳群を歩く―山の辺の道からのアプローチ

杣之内古墳群は、ハイキングコースとしても人気の「山の辺の道」から気軽にアクセスできます。周囲には案内板も整備されており、古墳の構造や背景を学びながらの散策が可能です。

杣之内古墳群を歩く~周辺マップ

たとえば、西山古墳周辺では、緑に囲まれた墳丘を登って古代の風景に想いを馳せることができます。周囲には天理教の施設や田園風景が広がり、歴史と現代が共存する不思議な空間を体感できるでしょう。

杣之内古墳群は、観光地としてはまだあまり知られていませんが、古代日本の政権構造や祭祀文化を知る上で非常に重要な遺跡群です。

都市の喧騒から少し離れ、静かな田園風景の中に身を置きながら、1500年以上前の権力者たちの足跡を感じてみませんか?

歴史の奥深さと、自然の豊かさが交差するこの地は、きっとあなたの心にも残ることでしょう。

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杣之内古墳群へのアクセスと見学情報

所在地:奈良県天理市杣之内町・勾田町・乙木町

電車・バスをご利用の場合

  • JR桜井(万葉まほろば)線・近鉄天理線「天理駅」下車、南東へ徒歩約45分(約3km)。
  • 奈良交通バス「勾田(まがた)バス停」下車、東へ徒歩約15分(約1km)

お車をご利用の場合

天理市営駐車場 山の辺の道(杣之内)をご利用ください。

天理市営駐車場 山の辺の道(杣之内)

西乗鞍古墳まで徒歩6分。駐車場は無料で利用できます。

▼右手が「西乗鞍古墳」、左手が「東乗鞍古墳」です。

天理市営駐車場 山の辺の道(杣之内)から見る西乗鞍古墳と東乗鞍古墳

西山古墳・西乗鞍古墳など自由見学可。東乗鞍古墳は原則非公開(発掘調査時は公開)。

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今後の予定|各古墳の個別紹介も順次公開!

今回ご紹介したのは、あくまで全体像。今後、以下の古墳を一基ずつ掘り下げてご紹介していきます。

  • 【西山古墳】日本最大の前方後方墳、その“異形”の真相とは?
  • 【西乗鞍古墳】物部氏の権威の象徴、大王墓に次ぐ巨大墳
  • 【東乗鞍古墳】武人の墓と家形石棺──6世紀初頭の儀礼空間
  • 【小墓古墳】小さな墳丘が語る、終末期の歴史的転換点

更新をお楽しみに!

まとめ|杣之内古墳群は“ヤマトの心臓部”

古墳時代という名のとおり、「古墳」はその時代を映す巨大なモニュメントです。
杣之内古墳群は、単なる遺跡の集まりではなく、古代国家の形成に深く関わった政治的・宗教的中心地といえる場所。

だからこそ、ただ見るだけでなく、「なぜここに?」「誰のために?」という視点を持って歩くと、歴史の深みが違って見えてきます。

こちらの記事では、天理市岩屋町に位置する「ハミ塚古墳」をご紹介しています。

ハミ塚古墳は、古墳時代終末期の大型方墳として非常に稀有な規模と構造を誇り、建築技術や副葬文化、社会構造を理解するうえで重要な古墳です。特に、出土した副葬品の豪華さや装飾性から、ヤマト王権内の有力豪族との繋がりが示唆される点で、物部氏との関係も強く想定されています。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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