特別展【天翔る飛鳥 烏頭尾精の世界】万葉と四神が舞う飛鳥を歩く(奈良県立万葉文化館)

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万葉のふるさと・奈良で生まれ育ったみくるです。

奈良県には『万葉集』ゆかりの歴史的風土・自然景観が多く残されています。そんな「万葉故地」を巡り、古代の人々の想いに触れるのが好きです。

古代の風は、今も飛鳥に吹いている──。
奈良県明日香村の奈良県立万葉文化館で開催中の特別展「天翔あまかけ飛鳥あすか 烏頭尾精うとおせいの世界」では、万葉の歌に息づく情景や、キトラ古墳の四神を色鮮やかに甦らせた作品が並びます。

特別展「天翔る飛鳥 鳥頭尾精の世界」開催中の「奈良県立万葉文化館」

明日香の丘や川、真神ヶ原を歩いた画家の足跡をたどれば、絵の中の風景と現地の空気が重なり合い、時間を越えた旅が始まります。古代と現代、絵と現地が響き合う、心解き放たれるひととき──その魅力をご紹介します。

開催期間は、2025年7月12日(土) ~ 2025年9月15日(月)です。

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奈良県立万葉文化館 特別展「天翔る飛鳥 烏頭尾精の世界」

天翔る飛鳥──烏頭尾精という画家との出会い

奈良県明日香村出身の日本画家、烏頭尾精(うとおせい)は、満93歳を迎えた現在も精力的に創作を続けられています。

特別展「天翔る飛鳥(あまかけるあすか)烏頭尾精の世界」では、16年の歳月をかけて奈良や京都の古都を描いた壮大な「古都シリーズ」の集大成として、令和6年(2024年)に完成した「あすかシリーズ」を含む、飛鳥・藤原・平城の古都を描いた作品12点や、長年の制作活動の裏側を垣間見ることのできる小品を含む71点が、一堂に並びます。

特別展「天翔る飛鳥 鳥頭尾精の世界」開催の様子

烏頭尾精の作品は、万葉集の情景や古代の守護神「四神」を色彩豊かに表現し、飛鳥の風土と古代ロマンを鮮やかに甦らせる独自の世界観が魅力です。

特別展「天翔る飛鳥 鳥頭尾精の世界」のパンフレット(裏面)

この展覧会は、烏頭尾精の70年以上にわたる飛鳥への愛と探求の軌跡を感じられる貴重な機会となっています。

烏頭尾精(うとおせい)とは

奈良県明日香村出身の日本画家、烏頭尾精(1932年〜)は、地元飛鳥の豊かな自然や歴史的景観を愛し、70年以上にわたり創作を続けました。
戦後間もなく画家としての活動を始め、奈良県文化功労者に選ばれるなど地域文化の発展にも尽力しました。
特に、『万葉集』の世界をテーマにした作品群は、飛鳥の風土と歌の情景を繊細な筆致と鮮やかな色彩で表現し、多くのファンを魅了しています。
また、国宝であるキトラ古墳の壁画「四神」をモチーフにしたシリーズでは、古代の神秘的な世界観を現代に甦らせる試みとして高い評価を受けました。
地域の文化イベントやワークショップにも積極的に参加し、飛鳥文化の普及にも貢献。
その絵画には、歴史と自然を深く見つめる温かなまなざしと、時空を超える旅への誘いが感じられます。

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万葉の風を描く──『明日香風』と『真神ヶ原眺望』

天翔る飛鳥 烏頭尾精の世界」では、『万葉集』の歌をテーマに描かれた日本画作品も展示されています。

『明日香風』(1997年制作/112.1×162.1 cm)

『万葉集』巻1-51、志貴皇子の歌「袖吹き返す 明日香風…」をモチーフに、万葉のふるさと・奈良の風土を画面から感じられる一作です。観る人の心にも、やさしい風が吹き抜けるような情感が広がります。

万葉日本画21 烏頭尾精「明日香風」
万葉日本画21 烏頭尾精「明日香風」(奈良県立万葉文化館所蔵)

こちらの記事では、志貴皇子の歌「袖吹き返す 明日香風…」をご紹介しています。明日香のどこか懐かしく心地よい風を思い出させてくれる、好きな歌のひとつです。

真神ヶ原眺望(1989年制作/182×227cm)

『万葉集』巻8-1636、舎人娘子の歌「大口の 真神の原に 降る雪は…」をモチーフにした作品です。「真神ヶ原」は、現在の明日香村にある飛鳥寺や万葉文化館付近の一帯を指す呼称と推定されています。

奈良県立万葉文化館に併設されている「明日香民俗資料館」の展望デッキからは、「真神ヶ原」を眺望できます。

「明日香民俗資料館」の展望デッキからの眺望

こちらの記事では、展望デッキに建つ舎人娘子の歌碑と、歌に詠まれている「大口真神原」をご紹介しています。

美しい景色が広がる気持ちの良い場所ですので、ぜひ万葉文化館と合わせてお立ち寄り下さいね。

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古代の守護神と出会う──四神の描写に宿る祈り

朱雀・青龍・白虎・玄武という四神は、古代中国から伝来し、天の方角や四季を守る存在です。キトラ古墳の壁画としても知られる彼らを、烏頭尾精は生き生きとした色彩で描き出しています。朱雀の炎のような朱、青龍の天空を切り裂くような青。静寂の中に力を秘めた白虎、深い闇の中にたたずむ玄武。古代人の祈りや願いが、そのまま筆先から溢れてくるようです。

展覧会のパンフレットに掲載されている「甦る朱雀」は、キトラ古墳の朱雀を描いた2017年の作品です。

特別展「天翔る飛鳥 鳥頭尾精の世界」の表面「甦る朱雀」

画家の足跡をたどって──飛鳥を歩くマップと情景

展覧会の配布資料に掲載されている足跡マップ「主な飛鳥の風景 取材場所」には、烏頭尾が描いた飛鳥の景色が望める場所が記されていました。

  • 「高家への道」:甘樫丘
  • 「山と杜と」:川原寺跡
  • 「かくれ里への道」:飛鳥川
  • 「坂田への道」:冬野川

このマップを手に、実際に飛鳥を歩けば、まるで画家自身の視線や気配を追体験できそうです。

こちらの記事では、「川原寺跡」をご紹介しています。かつてここには、飛鳥寺・薬師寺・大官大寺と並び「飛鳥の四大寺」の1つに数えられた大寺院が建っていました。

展覧会で感じたこと──古代と今、空気を共有するひととき

葉の歌を描き、四神を甦らせ、飛鳥を歩いた画家のまなざしは、そのまま私たちにも伝わってきます。古代の風と祈りを、現代の私たちも同じ空気として感じられる――そんな特別な時間が、この展覧会にはありました。

「天翔る飛鳥 鳥頭尾精の世界」開催情報

  • 開 催 名:特別展「天翔る飛鳥 烏頭尾精の世界」https://www.manyo.jp/event/detail.html?id=568
  • 開催期間2025年7月12日(土) ~ 2025年9月15日(月)
         10:00~17:30 ※入館は17:00まで
         休館日:月曜日
  • 開催場所:奈良県立万葉文化館 日本画展示室
  • 料  金:一般1,000円
         高・大学生500円
         小・中学生300円 
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奈良県立万葉文化館へのアクセス

奈良県高市郡明日香村飛鳥10

無料駐車場あり

奈良県立万葉文化館の駐車場

最後までお読み頂きありがとうございます。

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