山の辺の道沿いの神社仏閣や、雄大な古墳を見て歩くのが好きで、奈良県天理市によくでかけているみくるです。
今回は、天理市観光協会さんが作成された観光ガイドに掲載されている「山の辺の道を行く」から、「山の辺北エリア」のスポットをご紹介します。
前回の記事では、柿本氏の氏寺「柿本寺跡」をご紹介しました。
今回は、天理市櫟本地域の鎮守で前方後円墳の上に建つ神社「和邇下神社」をご紹介します。
天理市櫟本地域の鎮守「和邇下神社」
和邇下神社の御由緒と御祭神
和邇下神社は「延喜式」にみえる古い神社です。もとは「和爾部」と「櫟井臣」の祖神とされる第5代孝昭天皇の皇子・天足彦国押人命と日本帯彦国押人命が祀られていたそうですが、現在は大己貴命(大国主命)、素盞鳴命、稲田姫命が祀られています。
和邇下神社が建つ古墳が「治道山」と呼ばれることから、「治道社」と呼ばれることがあります。
和爾下神社古墳の上に鎮座し、後円部が境内になっています。
和邇下神社の説明書きに
神護景雲3年(769年)東大寺領の櫟庄へ水を引くため高瀬川の水路を今の参道に沿った線へ移し、道も新しく真直ぐに作らせたので、この道を治道の森といい、宮を治道社といった。
とあります。
神護景雲3年は、第48代称徳天皇の御代のことです。奈良時代から、治道社と呼ばれていたのですね。
櫟本は古くから交通の要衝として栄えてきた街です。また、大和政権時代、多くの天皇に何人もの后妃を出したといわれる古代豪族・「ワニ」(和珥・和爾)氏が住んだ地でもあります。
和邇下神社は、もともとは豪族の氏神でしたが、今は櫟本の鎮守の神社です。
和邇下神社古墳
和邇下神社古墳は、南北方向に主軸を置く前方後円墳で、北側に前方部、南側に後円部があります。規模は全長約105m、後円部径約60m、高さ約12m、前方部幅39mを測ります。
築造時期は採集された埴輪などから、4世紀末から5世紀初頭(古墳時代前期末から中期初頭)とされ、東大寺山古墳、赤土山古墳に次いで造られた古墳とされ、東大寺山古墳群を構成しています。
和邇下神社古墳から東北約800mには、和邇の集落がありますが、この周辺一帯は、和邇氏の本拠地と推定され、東大寺山古墳群は和爾氏の奥津城と考えられます。
内部主体や副葬品は明らかでありませんが、古墳のすぐ西側には「柿本寺跡」と伝わる場所があり、姫路地方産の竜山石で造られた長方形の石材が置かれています。
この石材は昔、櫟本小学校西側の四つ辻(高瀬川上の上街道)で石橋の一部として使われていたもので、橋の改築に伴い、柿本寺跡に運ばれました。長さは2.66m、幅1.58m、厚さ23~26cmで長辺に突帯が巡り、片面は平らに加工されています。
形状から古墳の石棺に用いられていた底石で、その規模から和爾下神社古墳の石室材と考えられています。
柿本寺跡については、こちらの記事でご紹介しています。
和邇下神社の鳥居と参道
国道169号線沿いに朱塗りの鳥居が建っています。
鳥居と社号標
「本殿国宝」と刻まれています。
拝殿前に建つ記念碑に「昭和13年7月国宝建造物に指定され現在重要文化財である」とありました。以前は国宝に指定されていたのですね。
和邇下神社の本殿は、桃山時代の風韻を遺し彫刻色彩に優美なる手法が見らえる、大変貴重なものです。
櫟本交差点から東が参道で、街中を流れる高瀬川の北側に沿うよう続いています。
駐車場は、参道を進んだ左手奥にあるのですが「これからは先は、和邇下神社の参道に就き車の通行は禁止します。」とあるので、反対側(東側)からお回り下さい。
柿本寺跡は、この参道の左手(北側)にあります。
境内の様子
参道と境内図
国道169号線沿いに建つ朱塗りの鳥居をくぐり、参道を東へ進み左手(北側)に折れると和邇下神社の境内です。
こちらの参道脇には「影姫あわれ」の歌碑が建っています。
和邇下神社の案内図です。
摂社
摂社の十二神社
ここから参道沿いに、厳島神社、熊野神社、琴平神社、稲荷神社など様々な境内摂社が祀られていました。琴平神社は大物主神を御祭神とします。
木漏れ日が美しい参道を進むと、右手に本殿へと続く階段が現れます。木々がトンネルのようになった美しい階段でした。
拝殿と本殿は和邇下神社古墳の後円部の上に建っているので、結構段があります。柿本寺跡が建つのは前方部のようです。
古墳の上に神社が建つのは大変珍しく、墳丘へと続く階段にワクワクしました。
拝殿と本殿
拝殿です。
和爾下神社の御祭神は3柱で、素戔嗚命と大巳貴命、稲田姫命とされます。
拝殿前の牛像です。素戔嗚命の本地の牛頭天王に由来するものと思われます。
拝殿の左脇の摂社・大年神社があります。御祭神は大年神です。
境内図によると、奥には若宮神社があるようです。御祭神は事代主命です。
本殿は、桁行三間、梁間二間、一重、切妻造、向拝一間、檜皮葺で桃山時代の様式をそなえ、国の重要文化財に指定されています。
階段脇の狛犬です。灯籠の竿には「治道宮」と刻まれています。
毎年、7月14日に祇園祭、10月第2日曜日には秋祭りが行われ、屋台などで賑わうそうです。
櫟本地域の鎮守として、地域の人々に大切されていることが伺い知れる美しい神社様でした。
和邇下神社へのアクセス
奈良県天理市櫟本町2490
国道169号線から続く参道に駐車場の案内が出ています。
無料駐車場です。
最後までお読み頂きありがとうございます。