古墳を見て歩きながら、古代に想いを馳せるのが好きなみくるです。
今回は奈良県橿原市の「奈良県立橿原考古学研究所附属博物館」で開催されていた「ホケノ山古墳―大和王権の成立へ―」をご紹介します。
開催期間は、令和6年(2024年)6月29日(土)~7月15日(月)でした。
奈良県立橿原考古学研究所附属博物館
奈良県立橿原考古学研究所附属博物館
橿原考古学研究所附属博物館では、橿原考古学研究所が1938年の創立以来行って来られた発掘の出土資料を中心に展示が行われています。その展示数は約3700点にも及びます。
博物館の特色は、橿原考古学研究所の調査・研究報告と一体となっていて学芸活動として展示公開を行われていることです。展示は、発掘調査で出土した実物資料が中心で、常設展「大和の考古学」は日本考古学資料をもとに「目で見る日本の歴史」になっています。
常設展のほか春秋2回の特別展、夏には発掘調査成果の速報展「大和を掘る」が開催されます。映像ライブラリー、情報コーナー、休憩室など無料で利用できる施設もあります。
こちらの記事で詳しくご紹介しています。
令和6年度 重要文化財指定記念「ホケノ山古墳―大和王権の成立へ―」
特別陳列「ホケノ山古墳」の概要
ホケノ山古墳の出土品が国の重要文化財に指定されることを記念して、令和6年度 重要文化財指定記念 特別陳列「ホケノ山古墳―大和王権の成立へ―」が開催されていました。
開催期間は、令和6年(2024年)6月29日(土)~7月15日(月)でした。
ホケノ山古墳は奈良県桜井市大字箸中に所在する前方後円墳です。卑弥呼のお墓とも言われる箸墓古墳と同じ「纏向遺跡」にあります。
➡前方後円墳発祥の地!【ホケノ山古墳】墳頂より望む箸墓古墳と卑弥呼の里の素晴らしい景観
奈良県立橿原考古学研究所は、県教育委員会、天理市教育委員会、桜井市教育委員会、外部の有識者からなる「大和古墳群学術調査委員会」を組織されて、平成5年(1993年)~平成12年(2000年)まで継続的に4基の古墳を調査されました。
ホケノ山古墳の調査では、数多くの出土品とともに、中心埋葬施設が石囲い木槨であることが明らかになるなど、重要な成果を上げられました。
ホケノ山古墳中心埋葬施設「石囲い木槨」の想定復元模型が展示されていました。
石囲い木槨は後円部中央で確認されました。木材(コウヤマキ)で造られた郭と、その周囲に多量の河原石を積み上げて石で囲う二重構造を持った埋葬施設です。木槨の中には舟型木棺が置かれ、棺内は水銀朱で覆われていたと推測されます。
文章で読んだだけではイメージし辛かったので、大変興味深く見入りました。このような埋葬施設を拝見するのは初めてでしたが、岡山県・香川県などに多くの類例が知られているそうです。
ホケノ山古墳の造営に大きく関わる纏向遺跡や、纏向古墳群の出土品も合わせて展示されていました。
ホケノ山古墳の全貌
ホケノ山古墳は、桜井市大字箸中、箸墓古墳の東方約250mの場所に位置します。1995年から2000年までの4次に及ぶ発掘調査によって、墳丘や埋葬施設、副葬品などの内容が明らかにとなりました。
その築造時期については意見の一致を見ない部分もありますが、箸墓古墳に先行する時期(3世紀ごろ)と推測されます。「卑弥呼の墓」説のある箸墓古墳に先行する点は、その被葬者像や社会構造を考えるうえで重要な事柄です。ホケノ山古墳の主が、箸墓古墳の被葬者(大王)の先代の有力者であった可能性や、重複した活動時期のなかで、大王を支える立場の人物であった可能性などが浮かびあがってきます。
また、各分野の研究により、ホケノ山古墳が、典型的な古墳時代の首長墓に引きつがれる属性を多く兼ね備えた古墳であることも明らかとなってきました。弥生時代の墳墓からの飛躍的変化と合わせて、このことがホケノ山古墳を最古級の「古墳」とする所以となっています。
橿原考古学研究所付属博物館
「卑弥呼の墓」説のある箸墓古墳です。
➡卑弥呼のお墓?!【箸墓古墳】美しい墳丘を眺めながら古代に想いを馳せる【奈良県桜井市】
ホケノ山古墳の出土遺物
ホケノ山古墳の出土遺物の中で特に興味があった「画紋帯神獣鏡」を拝見できて興奮しました。
完形になるものが一面と破片が見つかっています。内行花文鏡の破片と壺型土器も展示されていました。
画紋帯神獣鏡と刀剣類の出土状況です。
壺型土器は出土状況から、模型にあるように石囲い木槨の蓋上にあったと推測されています。
ヤマト王権の成立へ
纒向遺跡は、奈良県桜井市の三輪山の北西麓一帯にある弥生時代末期から古墳時代前期にかけての集落遺跡・複合遺跡で、国の史跡に指定されています。
纏向遺跡には箸墓古墳など古墳時代の初め頃に築造された前方後円墳が点在しており、前方後円墳発祥の地と考えられています。
古墳時代の開始をいつからとみるかは、研究者の立場によって異なります。定型的かつ隔絶的規模である箸墓古墳の出現を画期とする見方ある一方、纏向遺跡が盛行した「纏向型前方後円墳」が作られる庄内式期(3世紀前半頃)を古墳時代開始期と位置づける立場もあります。
ホケノ山古墳はそうした議論のなかでも極めて重要な存在であり、箸墓古墳の築造と同じ段階とみるか、先行するものとみるかでも、当該期の社会構造の見え方に大きな影響を及ぼします。
今年度、その歴史的価値が認められ、出土品が重要文化財に指定されるホケノ山古墳ですが、その研究は今後も新たな検討材料を手法を取り入れながら継続され、古墳時代ならびにヤマト王権の始まりについて需要な知見をもたらし続けることでしょう。
橿原考古学研究所付属博物館
ホケノ山古墳の出土品が重要文化財に指定されることで、今まで以上に纏向遺跡に注目が集まり、邪馬台国論争も活発になっているように感じます。個人的には邪馬台国は大和にあり、ヤマト王権に発展していったと考えています。
今後も研究に注目し続けたいです。
こちらの記事では、ホケノ山古墳のすぐ西側ある「堂ノ後古墳」と、「宮ノ前古墳」をご紹介しています。
今回の展示で纏向遺跡により興味が湧いたので、纏向古墳群を巡りたくなりました。
2023年度発掘調査速報展「大和を掘る39」
次回の展示は、2023年度発掘調査速報展「大和を掘る39」です。2023年度に奈良県内の発掘調査で出土した遺物や調査時の写真パネルなどが展示され、最新の調査成果が紹介されます。
開催期間は2024年7月27(土)~9月16日(月)です。
速報展『大和を掘る』は、おもに前年度の県内遺跡の発掘調査資料の展覧会として、県内市町村、研究所、寺社など各機関のご協力を得て例年開催しています。 39回目となる今回は、昨年度に発掘調査された遺跡を中心に31遺跡を選び、出土遺物・調査写真パネルを展示いたします。奈良県における最新の発掘調査の成果を多くの方々にご覧いただき、豊富な文化財を確認するとともに、奈良県の魅力を知っていただきたいと思います。
奈良県立橿原考古学研究所附属博物館
常設展「大和の考古学」
常設展「大和の考古学」では、旧石器時代、縄文時代、弥生時代、古墳時代、飛鳥・奈良時代、平安~室町時代の遺跡から出土した考古学資料が時代別に展示されています。
常設展については別の記事でご紹介します。
橿原考古学研究所附属博物館の利用案内
アクセス
奈良県橿原市畝傍町50-2
無料駐車場あり(約40台)
利用案内
- 開館時間 9時~17時(入館は16時30分まで)
- 休館日 月曜日(月曜日が祝日の場合はその翌日)、年末年始、そのほかに臨時休館日あり
- 観覧料 一般400円、高校・大学生300円、小・中学生200円
詳しくは橿原考古学研究所付属博物館の公式サイトをご覧ください。
最後までお読み頂きありがとうございます。