万葉集と百人一首が好きなみくるです。
『なぞりがき百人一首』をガラスペンとインクでなぞって、和歌の世界を楽しんでいます。
TBS日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』第3話「孤島の花」では、『百人一首』の歌が印象的に使われていました。
「もろともに あはれと思へ 山桜 花より外に 知る人もなし」
『百人一首』66番の前大僧正行尊の歌です。
今回はこの歌の意味と『海に眠るダイヤモンド』での描かれ方と、斎藤工さん演じる進平が持っていたこちらの紙に書かれている歌についてご紹介します。
『なぞりがき百人一首』66番/前大僧正行尊
もろともに あはれと思へ 山桜
『百人一首』66番の前大僧正行尊の歌は、俗世間を離れた厳しい修行中の僧侶が、ふと目に留まった山桜に話しかけるように、修行中の寂しさを詠んだ一首です。
もろともに あはれと思へ 山桜
花より外に 知る人もなし
前大僧正行尊
(現代語訳)
私がお前をいとおしいと思うように、山桜よ、お前も一緒に私をいとおしいんでおくれ。お前よりほかに親しい人もないのだから(ポツンと咲く山桜としばし孤独を分けあいたい)
(語義)
もろともに…「一緒に」の意の副詞。
あはれ…感動詞「あ」と「はれ」が組み合わさって生まれた言葉で、「愛しい」「いつくしい」という意味の感動を表す。山桜を人のように疑人化し、「一緒に愛しいと思っておくれ」と呼びかけている。
花より外に…「より」は限定を表す格助詞。この山桜以外に。
知る人…「知る人」とは知人のことではなく、「自分を理解してくれる人」のことを指す。
行尊は、修験道の行者として熊野や大峰の山中で厳しい修行を積んだ人です。修験道の行者はいわゆる山伏。奈良時代に役小角が開いた仏教の一派です。
前大僧正行尊(生没年不詳)平安中・後期の僧侶・歌人。道長に遠慮し東宮を辞退した三条天皇の第一皇子・敦明親王の孫。円城寺で出家、大峰山などで修行。52歳で鳥羽天皇の護持僧、68歳で天台座主に就くも、山門派・寺門派の対立から辞任。以後、円城寺の復興に努めた。
『金葉和歌集』の詞書に、大峰(現在の奈良県吉野郡の大峰山)で偶然山桜を見かけて詠んだ歌とあります。
険しい山に籠って行う山伏の修行は大変厳しいものです。誰一人いない山奥にひっそりと咲く山桜にどれほど慰められたことでしょうか。厳しい修行中だからこその、清々しく美しい歌だと思いました。
「古典まめ知識」では、山門派と寺門派について解説されています。
山門派と寺門派 比叡山延暦寺の天台座主3世円仁と、5世円珍との仏教解釈の違いから、その末流が対立。993年円仁派が比叡山の円珍派坊舎を焼き払ったため、円珍門流は山を下り園城寺に入って独立。寺門派となり、円仁門流は延暦寺に拠って山門派と称しました。
円仁と円珍の仏教解釈の違い 円仁は法華経の教えと密教の教えは同等であると考えたのに対して、円珍は法華経と密教では両者は同じ教えを説いているが密教の方が大事であると考えました。
端島と『百人一首』
海辺での進平(斎藤工さん)とリナ(池田エライザさん)との会話で、『百人一首』は炭鉱夫の荒くれ対策で、和尚が始めたものであることが分かりました。
第1話では、炭鉱夫みんなで『百人一首』を詠む場面がありましたが、『百人一首』は炭鉱夫の共通の趣味だったんですね。
進平が持っていた紙
進平とリナが見ている紙は、Xの投稿で斎藤工さんが持っている紙と同じものでした。
《 Teppei's Diary_✍︎ 》
— 10月期日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』【公式】 (@umininemuru_tbs) October 26, 2024
進平にいちゃん(#斎藤工 )は百人一首がお好き。
鉄平(#神木隆之介)
❁ 日曜劇場 #海に眠るダイヤモンド ❁
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第𝟐話 𝟏𝟏/𝟑(日) 𝟐𝟏:𝟎𝟎 放送 pic.twitter.com/VKgTA2k1Hb
百人一首の決まり字が書かれています。
百人一首の決まり字 「百人一首かるた(競技かるた)」で、相手より早く札を取るためには、和歌を覚える必要がります。百人一首には「決まり字」があり、上の句の」一文字めから六字めで歌が分かるようになっています。例えば、最初の一字めでわかる和歌は「一字決まり」といい、七首あります。決まり字は一字決まりから、六字決まりまであります。
『なぞりがき百人一首』に競技かるたの解説ページがあり、一字決まりの七首が載っています。
10首ある「二字決まり(二枚札)」の歌のうち5首が書かれています。
白露に 風の吹きしく 秋の野は
つらぬきとめぬ 玉ぞ散りける
37番 文屋朝康
ももしきや 古き軒端の しのぶにも
なほあまりある 昔なりけり
100番 順徳院
もろともに あはれと思へ 山桜
花より外に 知る人もなし
66番 前大僧正行尊
夕されば 門田の稲葉 おとづれて
葦のまろやに 秋風ぞ吹く
71番 大納言経信
由良の門を 渡る舟人 かぢを絶え
ゆくへも知らぬ 恋の路かな
46番 曽禰好忠
今回登場した歌は二字決まりの歌だったんですね。
いづみと朝子と山桜
いづみ(宮本信子さん)が、玲央(神木隆之介さん)に、歌の解釈を語って聞かせる場面も素敵でした。
「共に懐かしんでおくれ山桜よ。お前以外に本当の私の心を知ってくれるものはいないのだから。あんたが私を分からなくても、私があんたを分かってやれなくても、それは仕方がない。誰の心にも山桜があるんだ」
このあと場面が変わって、鉄平(神木隆之介さん二役)と朝子(杉崎花さん)。
二つの場面がリンクする演出に、いづみは朝子なのか?と思わせられます。
キラキラが好きな朝子に、いつもキラキラをくれる鉄平は、人生を変えるきっかけをくれた人。そして現代のいづみは、玲央に人生を変えるきっかけあげようとしている。
❁ 日曜劇場 #海に眠るダイヤモンド ❁
— 10月期日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』【公式】 (@umininemuru_tbs) November 10, 2024
ご覧いただきありがとうございました!
【 第𝟑話 孤島の花 】
朝子「すごか。夢が叶うた。」
──𝐬𝐢𝐧𝐜𝐞𝟏𝟗𝟓𝟓⌛︎#神木隆之介 #杉咲花#第𝟒話は𝟏𝟏月𝟏𝟕日放送 𓂃◌𓈒𓐍 pic.twitter.com/YzsrLLZKWU
時を超えて語られる『百人一首』の山桜の歌がとても印象的に使われた回でした。
なぞり書きに使用したガラスペンとインク
山桜を詠んだ歌に合わせて、ガラスペンは「まつぼっくり 雲母ピンク 細字」を、インクは「セーラー 四季織 夜桜」を使いました。
歌に合わせてインクとガラスペンを選んで、ゆっくりと和歌なぞるのは心安らぐ贅沢な時間です。
使用したなぞり書きの本
なぞりがき百人一首 ユーキャン学び出版(2020/10/23)
本の内容についてはこちらの記事で詳しくご紹介しています。
➡堂鳩でなぞる【なぞりがき百人一首】1番/天智天皇
ガラスペンで愉しむなぞり書き
なぞり書きに使っている万年筆インクとなぞり書きの本のまとめページを作っています。
最後までお読み頂きありがとうございます。