生まれも育ちも奈良県で、飛鳥・藤原もの知り博士になりたいみくるです。
今回は、奈良県高市郡明日香村栗原に鎮座する呉津彦神社をご紹介します。『「飛鳥・藤原まるごと博物館」検定公式テキストブック』に、「ムクロジ(無患子)」の巨樹があると紹介されているのを見て、惹かれて参拝した神社です。
かつては呉人の祖神を祀った「呉津彦神社」
概要
呉津彦神社は、明日香村内に鎮座する十四の式内社のうちの一社です。
御祭神は、木花咲耶姫命と天児屋根命です。
呉津彦神社が鎮座する栗原の地は、「呉人」が居住した地です。
『日本書紀』の雄略天皇14年(470年)正月の条に、身狭村主青らが呉の国(中国)の使とともに呉国の奉った手末才伎(機織り職人という意か)らを率いて帰り、呉人を檜隈野にはべらしめたので、「呉原」と名付けたとあります。
その住まわせた地の一つ「呉原」が「栗原」に転訛したものと考えられています。呉津彦神社は、その名前の通り本来は呉人の祖神を祀った神社とみられています。それが、いつの頃か木花咲耶姫命・天児屋根命の二神を祀る神社へ変化したといますが、本来の御祭神の呉津彦神を主祭神に加えている資料もあります。
身狭村主青は、橿原市見瀬町の牟佐坐神社に祀られています。
境内の様子
呉津彦神社は、栗原地区の集落の中にある小高い丘の上に鎮座しています。
丘の上に続く石段があり、その途中に鳥居が北東向きに建っています。
石段下の左側に手水鉢らしきものがありました。
石段を上って右側には、手水鉢とはまた別に手水舎が建っています。
石段の上は平らな空間になっており、右側(北西側)奥の石垣上に玉垣に囲まれて社殿が南東向きに建っています。
右側(北東側)に主祭神として「木花咲耶姫」が、左側(南西側)に境内社として「天児屋根命」が祀られているようです。
本殿前に配置されている砂岩製の狛犬
本社本殿前の左手に配置されている六臂の観音菩薩と思しき石仏
下調べが不充分で、写真をちゃんと撮れていなかったのですが、本社本殿の右手にブロックで造られた覆屋らしきものが二つ設けられおり、かつてここには本来の御祭神の呉津彦神が祀られていたようです。
2024年11月の撮影時は、社殿はありませんでした。
本社本殿と向かい合うように建つ桟瓦葺・平入切妻造の建物
本社本殿右手の磐座
ムクロジ(無患子)の巨樹
呉津彦神社の境内広場にあるムクロジ(無患子)の巨樹は、特に天然記念物などに指定されているわけではありませんが、全国的にも優数の個体といわれています。
ムクロジがここまで大きくなるのは珍しく、貴重なものです。
瘤状の大きな根の張りが特徴で、石段の上の広場入口にそびえ立っています。
ムクロジはムクロジ科の落葉高木で、秋になると美しく黄葉し、たくさんの球状の果実をつけます。果実は、直径2センチメートルほどで、熟すと半透明の黄褐色になります。
境内に種子がたくさん落ちていました。これを羽根つきの珠や数珠にするとは知りませんでした。
ムクロジは、古来より様々のことに用いられた「患いを無くす」植物だったのでしょうね。
呉津彦神社へのアクセス
奈良県高市郡明日香村栗原714
駐車場はありません。
キトラ古墳周辺地区 第一駐車場より徒歩11分です。
途中、小高い丘の急な坂道を上り下りしたので、遠く感じました。
呉津彦神社の境内への石段は、右手に見える丘の向こう側にあるのでぐるっと回ります。
しばらく進むと右手に石段と鳥居が見えてきます。
畝傍山が綺麗に見えました。
最後までお読み頂きありがとうございます。