NHK大河ドラマ「光る君へ」の放送を毎週心待ちにしているみくるです。
今回は「光る君へ」の世界になぞり書きを通して親しめる『ガラスペンでなぞる恋する古典 源氏物語と枕草子篇』の内容と定子が清少納言に贈った「言はで思ふぞ」をご紹介します。二人の機知に富んだやり取りが垣間見れる歌です。番組での描かれ方もご紹介しています。
この本は『源氏物語』と『枕草子』の恋にまつわる部分に焦点を当てて、和歌をなぞることで古の時代の男女の交流に想いを馳せられる内容になっています。
ガラスペンでなぞる恋する古典 源氏物語と枕草子篇
本書の特徴と内容
なぞり書きを思う存分楽しめる工夫がいっぱいの本です。
5種類の紙を使用
- OKピクシード01 やわらかな紙質でインクののりがよい紙
- HSライトフォース 軽やかでソフトな手触りのマット紙
- スライトホワイト キメ細やかで塗り絵の紙に使われることが多い
- 金門 独特の風合いを持つ半晒のクラフト紙
- b7トラネクスト 軽やかなのに厚みのある紙
紙の名前と特徴が書いてあるので、お気に入りを見つけられそうです。
28書体(フォント)をなぞれる
- みちくさ(モリサワ)
- ライラ(フォントワークス)
- シネマレター(モリサワ)
- ハミングL(フォントワークス)
- はせ筆(モリサワ) etc…
ページをめくるごとに違う書体が出て来るので新鮮な気持ちでなぞれます。
現代語訳と解説
現代語訳と解説、美しいカラーイラストからイメージを膨らませてインクを選ぶのも楽しいです。
作品を味わうための解説
監修の赤間恵都子さんによる分かりやすい解説があります。
恋する古典
平安時代の貴族はどのような恋をしていたのでしょう。
紫式部が描くのは、かなわぬ恋、行きずりの恋、一途な恋、浮気な恋など、さまざまな物語の恋模様です。
清少納言は、共寝の翌朝の妖艶な情景、恋情も醒める無粋な振舞いなど、現実的な恋のひとこまを記しました。
紫式部と清少納言の素顔
二人がライバル関係にあったことは有名ですが、共通点もたくさんありました。
- 中流貴族下級の出身で、漢学者や歌人輩出する家柄に生まれたこと。
- 母親は早逝したのか記録がなく、父親の影響を受けて育ち、高い教養を身につけたこと。
- 結婚して子どもを産み、夫と別れたあとに藤原摂関家に雇われ宮廷女房として働いたこと。
「光る君へ」ではまひろ(紫式部)とききょう(清少納言)は仲が良いように描かれていますが、紫式部が日記に清少納言批判を書いていることはよく知られています。
共通点が多いからこと、先に活躍していた清少納言に対する嫉妬心が大きかったのかもしれませんね。今後、二人の関係がどんな風に描かれるのか楽しみです。
源氏物語の恋
源氏物語は、身分、容貌、才能のすべてにおいて優れた光源氏が、彼の人生のさまざまな場面で出会う多くの女性たちとの関係を中心に描いた物語です。
本書には光源氏が女性たちと交わした和歌と現代語訳が書かれています。「万葉歌碑巡り」や『なぞりがき百人一首』などを通して興味を持った和歌の世界を、より深められそうなので、なぞるのが楽しみです。
こちらの記事では、『なぞりがき百人一首』より紫式部が詠んだ歌をご紹介しています。
➡大河ドラマ「光る君へ」のタイトルはこの歌から!?【なぞりがき百人一首】57番/紫式部
光源氏が恋した女性たち
物語を複雑にしている多くの女性たちを、特徴を捉えて解説されているので、鑑賞の大きな助けになりそうです。それぞれのページで引用させて頂こうと思っています。
枕草子の恋
枕草子には清少納言が宮廷女房として宮中で応対した貴族男性たちが描かれています。彼らは個人的な恋愛相手ではなく、定子の後宮女房の立場での一時的な交流相手です。
清少納言が最も敬愛し、最後まで恋心ともいえる気持ちを抱いた相手は後宮主人の藤原定子でした。
清少納言の恋愛事情
清少納言は宮廷で上流貴族の男性たちと疑似恋愛を繰り広げます。彼らにどのように応対するかが定子後宮の評価につながるので、常に緊張感を強いられる関係でした。
本書には、「光る君へ」にも登場している藤原行成と交わした和歌などが掲載されています。
定子が清少納言に贈った「言はで思ふぞ」
今回は『枕草子』より、定子が清少納言に贈った歌をご紹介します。
「光る君へ」でも描かれた「長徳の変」のあと、長く里下りをしていた清少納言に、定子が「言はで思ふぞ」という句を山吹の花びらに書いて贈りました。それは『古今和歌六帖』から引用したものでした。
心には 下行く水の わきかへり
言はで思ふぞ 言ふにまされり
(現代語訳)
表には見えないけれど、心の中には地下水が沸き返っているように、何も言わないであなたのことを思っています。それは口に出すよりもっと強い思いなのです。
この歌が山吹の花びらに書かれていたのは、『古今集』に載る和歌からです。
山吹の 花色衣 ぬしや誰
問へど答へず くちなしにして
素性法師
山吹の花のような色の衣に持ち主は誰ですか、と聞いても答えません。それはくちなしだからです。
歌にある「山吹の衣」の色は山吹の花で染めるのではなく、「梔子の花」で染めていました。梔子=口無しだから答えないとユーモア溢れる歌です。
清少納言はこれらの2つの歌がすぐに分かったのでしょう。
「口には出さない、でも口に出して言うよりずっと心の中のあなたへの思いは優っている」という定子の深い思いに触れ再出仕を決意しました。
定子が清少納言に歌を贈った背景
「光る君へ」第21回「旅立ち」で描かれた定子と清少納言の強い絆のお話しはとても感動的でしたが、史実は違ったようでした。
定子は、今回なぞった「言はで思うぞ」の他にも何通も手紙を送って、「小納言、戻ってきて」との思いを伝えていました。
やり取りの中で定子が紙を贈ったことで、清少納言は『枕草子』の執筆を始めたのでした。
「光る君へ」でのまひろとききょうの会話の場面で描かれていたエピソードは『枕草子』の「跋文(あとがき)」に書かれているものです。
定子さまに内大臣様(藤原伊周)が(紙を)献上なさったんだけど、「これに何を書いたらいいかしら? 帝は史記という書物をお書きになっていらっしゃるんだけど」なんておっしゃったもんだから、「枕でございましょう」って申し上げたら、「なら、あなたにあげましょう」っておっしゃってご下賜されたのを、変わったことをあれやこれやと、無くならないぐらい大量の紙だったんだけど、全部書いちゃおう!って書いたもんだから、まったくワケわかんないことでいっぱいになっちゃったわ。
史記だから敷き物で、枕ですね、とまひろが言っていました。素性法師の歌もそうでしたが、定子も清少納言も言葉遊びが好きだったようです。
藤原斉信と親しかったことなどから女房たちに裏切りを疑われ、虐められたことで引きこもっていた清少納言の心を癒したのは定子の優しい気持ちと強い信頼、そして「書く」と言うことでした。
そして定子は清少納言が書いた『枕草子』に癒された…『枕草子』などに見られる実際のエピソードも感動的です。
美しいこの文字はききょう(清少納言)を演じられているファーストサマーウイカさんが実際に書かれたものです。
『大人の脳トレ名作なぞり書き』では「春はあけぼの」をなぞりました。
読み返すと「光る君へ」の感動が蘇ります。
なぞり書きに使用したガラスペンとインク
心の中にある思いを「地下水が沸き返っているように」と例える歌を山吹の花びらに書いたことから、『COCOUNITYインクセット』の「ライトブルー」と「ゴールデンイエロー」のインクでなぞりました。
10色あるので、このセットだけでイラストや作品に合わせたインクが選べます。
COCOUNITYガラスペンセット
ガラスペンはガラス工房まつぼっくりさんの「雲母ピンク 細字」を使っています。
使用したなぞり書きの本
ガラスペンでなぞる恋する古典 源氏物語と枕草子篇 実務教育出版(2023.8.20)
最後までお読み頂きありがとうございます。