ユーキャンさんのおうち時間シリーズ『なぞりがき百人一首』を楽しみながら、「光る君へ」の場面を思い出しているみくるです。
今回は作中でも登場した儀同三司母(高階貴子)が詠んだ百人一首54番の歌をご紹介します。人物紹介で番組の内容に触れる可能性があるのでご注意下さい。
『なぞりがき百人一首』は和歌の世界をなぞりがきで体感できる本です。一首づつなぞりながら丁寧に鑑賞しています。
忘れじの 行く末までは かたければ
百人一首54番の儀同三司母の歌は、平安女性のストレートな心情を詠んだ歌です。
忘れじの 行く末までは かたければ
今日を限りの 命ともがな
54番/儀同三司母
(現代語訳)
君とは絶対に別れない、という貴方の言葉も先々まではわかりません。ならばいっそ、そう言ってくださっているいまのうちに死んでしまいたい(いま愛されていても将来が不安すぎる)
(語義)
忘れじの…君を忘れない(ずっと通い続ける)という言葉も
行く末…将来
かたければ…難しいので・無理でしょうから、の意
命ともがな…「~もがな」は願望の終助詞で「~ならいいのに」の意
儀同三司母(?-996)高階貴子。平安時代の女流歌人。藤原道隆(一条天皇の摂政・関白)の正妻で、道隆との間には定子(一条天皇の中宮)・伊周(一条天皇の内大臣)を含む男子3人・女子4人を設ける。995年に夫が急死、翌年には息子・伊周が大宰府に左遷されるなど、失意のうちの亡くなった。
「光る君へ」での描かれ方
NHK大河ドラマ「光る君へ」では、儀同三司母(高階貴子)を板谷由夏さんが演じられています。
藤原道隆の嫡妻。宮仕えの経験があり、はきはきした知的な女性。道隆のあとを継ぐ息子たち、そして天皇への入内が見込まれる娘の定子の教育に力を入れる。
「光る君へ」人物紹介】高階 貴子◆大河ドラマ「光る君へ」 – NHK
高階貴子の夫の藤原道隆は井浦新さんが演じられています。
夫婦仲睦まじい様子を描く場面が度々登場していました。
「光る君へ」第17回「うつろい」でのお二人の場面に感動しました。
死の床で道隆は貴子に「そなたに初めて会ったのは、内裏の内侍処であった。つんとすました女子であった」と言います。
これに対し貴子は「道隆さまはお背が高く、きらきらと輝く殿御でございました」と答えます。
対して道隆は「忘れじの行く末まではかたければ今日を限りの命ともがな」とかすれるような声で呟き、「この歌で貴子と決めた・・・」と命を落としました。
「百人一首」54番はのこの歌は新古今集に掲載された歌で、詞書に「中関白(藤原道隆)通ひ初め侍りけるころ」とあります。中関白(道隆)が家に通いはじめた頃に歌った歌です、という意味で、新婚の妻が一番幸せな時期に詠んだようです。当時から広く世に知られていた歌でした。
同じく、死の床で藤原道綱母(作中名「藤原寧子」)の歌を口ずさんだ場面を思い出しました。
➡【なぞりがき百人一首】「光る君へ」登場で注目集まる!道綱母の歌~兼家との輝かしい日々
のちの場面で「あの方の歌を世に出してあげた」と道綱母がまひろたちに語っていました。夫の輝かしい日を歌にして残したのは同じだったですね。
道隆はまだまだこれからという時に43歳の若さで亡くなりました。さぞかし無念だったことでしょう。でも、愛する妻に看取られて温かな気持ちで最後を迎えられて良かったです。
「百人一首」の作者名「儀同三司母」は息子の伊周の官職の唐名(儀同三司)によります。唐名は、日本の律令制下の官職名や部署名を、同様の職掌を持つ中国の官称にあてはめた雅称です。
(以下今後の展開に触れる可能性があります)
道隆が病死したあと、息子の伊周と隆家は道長との政争に敗れ、権勢は道長側に移ります。翌年になり、伊周と隆家は、花山院に矢を射掛けた罪(長徳の変)によって大宰権帥・出雲権守にそれぞれ左降・配流されます。
貴子は出立の車に取り付いて同行を願いますが、許されませんでした。その後まもなく病を得て、息子の身の上を案じながら同年10月末に亡くなります。
貴子は看取ってくれる子らも傍におらず、寂しい最後を迎えるのでしょうか・・・。
幸せの絶頂期に詠まれた歌をピンクのインクでなぞりました。ガラスペンはまつぼっくりさんの「雲母ピンク細字」を使っています。
最後に高階貴子を演じられている板谷由夏さんのインタビューを引用させて頂きます。
めちゃくちゃ愛した人が私が詠んだラブレターのような歌を最後に詠んで死んでいくって、なんてロマンチックなんだろうって思いました。すごくやっぱりお互い情熱的な恋愛をしていたんだなと思って。(中略)「会ったころはこうだったよね」って言いながら片方が死んでいくってすごいなと、その二人の絆がね。だから悲しいけれど、(中略)二人で共有できる思い出がたくさんあるっていうほど幸せなことはないから、それはすごくほわんとしました。
https://x.com/nhk_hikarukimie/
高階貴子にも幸せな最後が用意されていることを願います。
「光る君へ」の登場人物たちが詠んだ歌
「光る君へ」のおかげで『百人一首』の歌人たちがぐっと身近になりました。「光る君へ」の登場人物たちが詠んだ歌を番組での描かれ方と感想を交えてご紹介しています。
42番/清原元輔(清少納言の父)
➡【なぞりがき百人一首】清少納言にプレッシャーを与える存在「42番/清原元輔」〈光る君へ〉
53番/右大将道綱母(藤原道綱母)
➡【なぞりがき百人一首】「光る君へ」登場で注目集まる!道綱母の歌~兼家との輝かしい日々
54番/儀同三司母(高階貴子)
(当記事)
55番/大納言公任(藤原公任)
➡【なぞりがき百人一首】「光る君へ」町田啓太さん演じる貴公子ぶりが人気!「55番/大納言公任(藤原公任)」
56番/和泉式部
➡【なぞりがき百人一首】紫式部と共に中宮・彰子に出仕「56番/和泉式部」と光る君へ
57番/紫式部
➡大河ドラマ「光る君へ」のタイトルはこの歌から!?【なぞりがき百人一首】57番/紫式部
59番/赤染衛門
➡大河ドラマ「光る君へ」に登場で話題!【なぞりがき百人一首】59番/赤染衛門を演じるのは元タカラジェンヌ
62番/清少納言
➡【なぞりがき百人一首】「光る君へ」ファーストサマーウイカさんの魅力的な演技で人気!「62番/清少納言」
63番/左京大夫通雅
➡【なぞりがき百人一首】伊周の長男で悪三位と呼ばれる「63番/左京大夫通雅」と光る君へ
使用したなぞり書きの本
なぞりがき百人一首 ユーキャン学び出版(2020/10/23)
本の内容についてはこちらの記事で詳しくご紹介しています。
➡堂鳩でなぞる【なぞりがき百人一首】1番/天智天皇【万年筆のある毎日】
最後までお読み頂きありがとうございます。