『万葉集』と『百人一首』が好きで、歌碑巡りも楽しんでいるみくるです。
花や草木に詳しくなれると、もっと和歌を楽しめそうと思い始めたのが『なぞりがき万葉集』です。
『なぞりがき万葉集』は、現存する日本最古の歌集『万葉集』全20巻、約4500首の中から、萩や梅、撫子など、花や草木を詠んだ歌を選んで取り上げられた本です。
花や草木に思いを託して歌を詠んだ当時の人たちの心に触れ、『万葉集』の世界を味わいながら、ゆったりと美文字レッスンの時間を楽しんでいます。
今回は、秋の植物より「いちしの花」を詠んだ歌をご紹介します。「道端のいちしの花が目立つように、私の恋しい妻のことをみんなに知られてしまいました」という歌です。
「いちしの花(ヒガンバナ)」を詠んだ歌
道の辺のいちしの花のいちしろく…
植物は四季で分類し、現代植物名の五十音順に掲載されています。
「いちしの花」がどの花を指すかは諸説ありますが、ここでは「ヒガンバナ」とタイトルを付けて掲載されています。
(原文)
路邊 壱師花 灼然
人皆知 我恋孋
〔或本歌曰、灼然人知尒家里継而之念者〕
(読み下し)
道の辺の いちしの花の いちしろく
人皆知りぬ 我が恋妻は
万葉集 巻11-2480 柿本人麻呂歌集
(現代語訳)
道ばたの「いちし」の花のように、はっきりと人はみんな知ってしまった。私の恋しい妻を。
(語義)
いちしろく…はっきり目立つ
『万葉集』の中の「いちし」をヒガンバナに推定したのは、植物学者の牧野富太郎といわれています。
明日香村の彼岸花
秋のお彼岸の頃には、明日香村のあちこちで、鮮やかな紅色をしたヒガンバナ(別名、曼殊沙華)が見頃を迎えます。
中国原産の植物で、古い時代に日本に持ち込まれた史前帰化植物とされています。
棚田の畔などに多く、稲穂とのコントラストも印象的で、飛鳥の田園風景を象徴する草花となっています。特に稲渕の棚田では「彼岸花祭り」も開催され、大勢の来訪者で賑わいます。
古くから日本にあった花なのに、奈良県明日香村や、山の辺の道で強烈な印象を残すヒガンバナを詠んだ歌が、この一首しかないのを不思議に思いました。
こちらの記事では、秋の山の辺の道をご紹介しています。あちらこちらに彼岸花が咲いていました。
使用したガラスペンとインク
はっきりと目立つ花を詠んだ歌を、濃い赤色のインク呉竹さんのインクカフェ明治のいろ「洗朱」でなぞりました。
呉竹 インクカフェ 明治のいろ 洗朱
「明治のいろ」インクは、明治の時代に思いを馳せた、その時代に流行した色をイメージしたカラーインクです。
明治時代の後期、日本文化を大切に思い、伝統的な日本調の色も新しく登場します。その中の一つが洗朱です。「あらいしゅ」とは洗ったような明るい”朱”色や、朱色が淡く薄くなったような色でもあります。
ガラスペンは「COCOUNITYガラスペンセット」のものを使いました。
COCOUNITYガラスペンセット
使用したなぞり書きの本
なぞりがき万葉集―いにしえの草花の歌 ユーキャン学び出版(2022/10/21)
本の内容はこちらの記事で詳しくご紹介しています。
➡【なぞりがき万葉集】丹波大女娘子が詠んだ恋の歌と大神神社「巳の神杉」
ガラスペンで愉しむなぞり書き
なぞり書きのまとめページを作りました。
流行りのガラスペンとインクを使いたいけれど、文字を書く習慣が無いし何に使ったらいいか分からないって思っていた私にとって、なぞり書きはぴったりなガラスペンとインクの楽しみ方です。
書写とは違い、なぞり書きはなぞることに集中できるのが気に入っています。
ガラスペンの他に万年筆やボールペンなどでもなぞり書きを愉しんでいます。
最後までお読み頂きありがとうございます。