【山の辺の道の歌碑めぐり】久松潜一氏揮毫の三諸山(三輪山)を詠んだ歌(奈良県桜井市)

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景色を楽しみながら歌碑を訪ね歩き、いにしえの歌人の思いに触れるのが好きなみくるです。

日本最古の道「山の辺の道」には38基もの歌碑が建てられています。全部を見つけたいと思っています。

観光パンフレット「山の辺の道」より、「山の辺の道の歌碑」

今回は、観光パンフレット「山の辺の道」に掲載されている中から、26番の久松潜一ひさまつせんいち氏揮毫の歌碑をご紹介します。

国文学者の久松潜一氏は、元東大教授で後に慶応大学、国学院大学、鶴見大学でも教鞭をとられた方で、犬養孝いぬかいたかし先生の恩師でもあられた方です。

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井寺池の三諸山(三輪山)を詠んだ歌碑

三諸は人の守る山

今回ご紹介する久松潜一ひさまつせんいち氏揮毫の歌碑は、奈良県桜井市三輪の井寺池いでらいけの北側の堤に建っています。

井寺池周辺案内図

井寺池いでらいけは、西に大和平野を、東に三輪山みわやまを一望できるビューポイントとして知られています。

井寺池から望む三輪山(桜)

上池と下池に仕切る堤には、川端康成揮毫の歌碑と、東山魁夷揮毫の歌碑が建っています。

井寺池の堤

久松潜一氏揮毫の歌碑が建つのは、この堤を北の端まで進んで、右手(東)に折れたあたりです。

井寺池に建つ久松潜一氏揮毫の歌碑

(原文)
三諸者 人之守山
本邊者 馬酔木花開
末邊方 椿花開

浦妙山曽 泣兒守山

(読み下し)
三諸みもろは 人のる山
本辺もとべは 馬酔木あしび花咲き
末辺うらべは 椿つばき花咲く
うらぐはし山そ 泣く子
る山
万葉集 巻13-3222 作者未詳

(現代語訳)
三諸山みもろやま三輪山みわやま)は、人々が大切に守っている山。麓には馬酔木の花が咲き、山頂には椿の花が咲く。ほんとうに美しく素晴らしい山よ。泣く子を守るように皆が大切にする山よ。

井寺池から望む三輪山は、神々しい美しさで、この歌碑が建てられるのに相応しい場所だと思いました。

2月に撮影した写真です。桜の季節とはまた違う、静かな美しさがありました。

井寺池から望む三輪山(冬)
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久松潜一氏と桜井市の万葉歌碑

柿本人麻呂、額田王など「山の辺の道」をはじめ桜井市の古道には、『万葉集』にその名を残す名歌人たちの歌碑が六十数基、残されています。

これらの歌碑は、昭和46年(1971年)当時の桜井市長と桜井市出身の文芸評論家・保田與重郎やすだよじゅうろう氏を中心に「心ある人々に記紀万葉のふるさとと、桜井の歴史を体感し楽しんでいただこう」という思いで呼びかけられ、多くの文化人に賛同をいただき揮毫されたものです。 

三輪山の美しさを詠んだ歌碑を揮毫された久松潜一氏(1984-1976)は、生涯『万葉集』を愛し続けられたといいます。犬養孝先生の恩師でもあられたので、何度も奈良に足を運ばれたのではないでしょうか。

久松潜一氏の絶筆である『万葉秀歌』が、手に取りやすい文庫本で出版されています。

万葉秀歌 久松潜一 講談社学術文庫(1976/6/1)

本書は、生涯『万葉集』を愛しつづけた久松博士が、最期まで情熱を傾注してその解釈と鑑賞を行った、万葉の秀歌900首の集大成であり、著者の絶筆である。選びぬかれた秀れた歌、人口に膾炙した歌の1つ1つに加えられた、わかりやすく、ゆきとどいた注釈と、深い理解にみちた鑑賞とがあいまって、『万葉集』の心を伝え、現代人に一層親しみやすいものとなっている。本巻には、『万葉集』巻第1・巻第2の歌から110首を収録する。

『万葉秀歌(一)』(久松 潜一)|講談社

久松潜一氏の教え子であった犬養孝先生は、日本全国の万葉ゆかりの地を生涯を通して歩き、「万葉風土学」を提唱した万葉集研究の第一人者です。

こちらの記事では、歴史と万葉のふるさとである飛鳥を愛し、その保存に尽力した犬養孝氏の業績を顕彰する記念館である「犬養万葉記念館」をご紹介しています。

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三諸山(三輪山)とは

三諸山は、三輪山の古来からの呼び方です。

古来、大物主大神がしずまる神の山として信仰され、『古事記』や『日本書紀』には、御諸山(みもろやま)、 美和山、三諸岳(みもろだけ)と記されています。

高さ467メートル、周囲16キロメートル、面積350ヘクタールのお山は松・杉・檜などの大樹に覆われて、一木一草に至るまで神宿るものとして尊ばれています。

大神神社の大鳥居と三輪山
大神神社の大鳥居と三輪山

特に杉は『万葉集』をはじめ、多くの歌集に詠われ「三輪の神杉」として神聖視され、後世に三輪山の杉葉で造られた杉玉が酒造りのシンボルとして酒屋の軒先に飾られるようになりました。

大神神社の御神木「巳の神杉」
大神神社の御神木「巳の神杉」

こちらの記事では、酒造り発祥の地と言われる三輪で360年前から酒造りをされている、三輪に現存する唯一の酒蔵「今西酒造」さんをご紹介しています。

今西酒造さんは、三輪山が古来より「三諸山みむろやま」と呼ばれている事、 また、三輪山は「杉」に神様が宿るとされている事から360有余年「三諸杉みむろすぎ」という銘柄で酒造りをされています。

三諸杉 蔵出し限定酒 おりがらみ

山中には神霊しんれいしずまる岩が点在し、磐座(いわくら)と呼ばれて信仰の対象となっています。大神神社の古い縁起書には頂上の磐座いわくら大物主大神おおものぬしのおおかみ、中腹の磐座いわくらには大己貴神おおなむちのかみ、麓の磐座いわくらには少彦名神すくなひこなのかみしずまると記されています。

井寺池からほど近い檜原神社ひばらじんじゃの御神体は、三輪山中にある磐座です。

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久松潜一揮毫の歌碑『万葉集』(巻13-3222)へのアクセス

奈良県桜井市箸中1230

駐車場はありません。
山の辺の道沿いに建つ檜原神社ひばらじんじゃからは、往復10分ほどの距離です。周辺には、他にも歌碑が建っています。

こちらの記事では、大神神社の祭神が酒造りの神として敬われる由縁となった活日いくひの歌碑をご紹介しています。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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