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【於美阿志神社】阿知使主と東漢氏の歴史を感じる古社(奈良県明日香村)

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古墳や古道、そして古代史の舞台となった場所を歩くのが大好きなみくるです。

奈良県明日香村の檜前(ひのくま)地区。のどかな田園風景が広がるこの地には、日本の古代史において極めて重要な役割を果たした渡来人(帰化人)集団のルーツが秘められています。

それが、東漢氏(やまとのあやうじ)。そして、その祖神を祀るのが、格式高い「於美阿志神社(おみあしじんじゃ)」です。

於美阿志神社のアイキャッチ画像

この神社が鎮座する場所は、かつて宣化天皇の皇居(檜隈廬入野宮跡)であり、氏寺の檜隈寺跡でもあるという、宮・寺・社という三つの歴史が重なり合う稀有なスポットです

境内には静かな時間が流れ、地域の人々の信仰が今も息づいています。
秋には、周辺に咲く彼岸花が彩りを添え、歴史と自然が溶け合う美しい風景に出会えます。

於美阿志神社の付近に咲く彼岸花
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【於美阿志神社】東漢氏のルーツと信仰

「於美阿志神社」の社名の由来と祖神・阿知使主

奈良県高市郡明日香村の檜隈(ひのくま)地区に鎮座する「於美阿志神社(おみあしじんじゃ)」は、古代氏族・東漢氏(やまとのあやうじ)の祖である阿知使主(あちのおみ)を祀る神社です。
社名の「於美阿志」は、この祖神・阿知使主の名に由来すると伝えられています。

  • 所在地:奈良県高市郡明日香村檜前
  • 御祭神:阿知使主神(あちのおみのかみ)
     ※伝承では、その配偶神をあわせて二柱祀るとされます。
  • 社格等:旧村社
  • 創建:詳細不詳(伝承によれば古代、東漢氏が氏神として創祀)

阿知使主は、応神天皇の時代に百済から渡来し、文物や技術を日本に伝えた人物として知られています。
その功績により大和に土着したのち、東漢氏の祖神として厚く信仰されるようになりました。

於美阿志神社の境内は、宣化天皇が皇居を置いたとされる檜隈盧入野宮跡(ひのくまのいりののみやあと)と重なり、古代の大陸文化と飛鳥時代の始まりを感じることができます。

宣化天皇の檜隈盧入野宮跡の石碑
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阿知使主と東漢氏の信仰

阿知使主は、『日本書紀』や『古事記』にも登場する渡来系氏族の祖です。
応神天皇の命を受けて百済から渡来し、文筆や機織などの技術、さらに礼法や典籍を日本に伝えたとされます。

その後、子孫たちは「東漢氏(やまとのあやうじ)」として大和地方に根づき、宮廷に仕える技術者集団として活躍しました。
於美阿志神社は、そうした東漢氏の氏神としての信仰の中心地であり、今も地域の守り神として崇敬を集めています。

社名の「於美阿志」は、「阿知使主(あちのおみ)」を音写したもの。
古代の渡来文化を象徴する名をそのままに伝える、極めて貴重な社名です。

於美阿志神社の鳥居
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格式ある式内社と境内地の変遷

於美阿志神社は、古代の格式を示す延喜式内社(えんぎしきないしゃ)に比定される古社です。

延喜式内社とは? 古代国家公認の格式

延喜式内社(えんぎしきないしゃ)とは、平安時代中期に編纂された古代の法典『延喜式(えんぎしき)』に記載されている神社のことです。

『延喜式』は、当時の行政・祭祀のルールを定めたもので、ここに名前が載るということは、その神社が朝廷から重要視され、公的なお祭り(祭祀)の対象であったことを証明します。

リストに記載された約3,000社(当時)は、奈良時代から平安時代初期にかけて、既に地域で信仰を集めていた由緒ある神社ばかりです。そのため、式内社であることは、千年以上前に遡る確かな歴史を持つ証拠となります。

於美阿志神社が「延喜式式内社」に比定されていることは、この小さな神社が、飛鳥時代から続く東漢氏の強力な信仰と共に、古代国家の中枢から認められていた、極めて重要な存在だったことを意味しています。

しかし、現在の社殿が建つ場所は、元々この神社の鎮座地ではありませんでした。

  • 中世以前: 神社のすぐ西側、道を隔てた場所に鎮座していたと伝えられています。
  • 明治時代: 現在の場所、すなわ檜隈寺跡(ひのくまでらあと)の主要部分に遷座しました。

これにより、於美阿志神社は、東漢氏が創建した氏寺の遺構を拝殿や本殿の下に抱え込むという、非常に珍しい形態をとることになりました。参拝の際は、足元一帯が古代の伽藍跡であることに思いを馳せることができます。

於美阿志神社の境内にある檜前寺の講堂跡
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境内の様子

於美阿志神社の境内は、東漢氏が築いた三つの歴史の痕跡が凝縮された場所です。

  • 神社の中心(社):阿知使主夫妻を祀る現在の拝殿・本殿。
  • 仏教の痕跡(寺):境内には、東漢氏の氏寺であった檜隈寺(ひのくまでら)の跡が広がっています。
  • 天皇の宮跡(宮):神社の鳥居付近には、第28代 宣化天皇が都とした檜隈廬入野宮跡を示す石碑が立てられています。
檜前寺跡の現地説明板

境内はこぢんまりとしていながらも、厳かな雰囲気に包まれています。

於美阿志神社の鳥居と社殿

鳥居をくぐると、正面に社殿が西向きに並んでいます。

於美阿志神社の社殿

桟瓦葺の平入切妻造の拝殿

於美阿志神社の拝殿
於美阿志神社の拝殿

拝殿の後方には、塀と瑞垣で二重に囲まれて銅板葺・一間社流造の本殿が建っています。

於美阿志神社の本殿

阿知使主夫妻をお祀りします。

於美阿志神社の本殿

鳥居をくぐって左側に扇形の手水鉢が配置され、その傍らに鳥居型の石造物がありますが、何のためのものか分かりませんでした。

於美阿志神社の境内にある石造の鳥居と手水鉢

鳥居をくぐって右側に建つ境内社。社名・祭神は不明。

於美阿志神社の境内社

境内の奥(南側)に建つ境内社。社名・祭神は不明。

於美阿志神社の境内社

この境内社のある辺りは檜隅寺の金堂のあった場所で、三間四方の建物跡が検出されています。

於美阿志神社の現地説明板

本殿の右側(南側)に平安時代後期の石造十三重塔があります。

於美阿志神社の境内にある石造十三重塔

石造十三重塔は多くが鎌倉時代以降の作であり、平安時代にまで遡るものは極めて珍しい例です。相輪が欠けているものの、その貴重さから国指定重要文化財となっています。

重要文化財に指定されている石造十三重塔

この石造十三重塔のある辺りは檜隅寺の塔跡が検出されています。

於美阿志神社の境内にある檜隅寺の塔跡

鳥居をくぐって右側には、「宣化天皇 檜隈盧入野宮跡」の石碑も建ち、神社の歴史的背景を今に伝えています。

「宣化天皇 檜隈盧入野宮跡」の石碑

宣化天皇がなぜこの「渡来人の里」に宮を置いたのかという、歴史の深層については、こちらの記事で詳しく解説しています。ぜひ合わせてお読みください。

周囲には樹々が生い茂り、静寂の中に古代の面影を感じることができます。

周囲に樹が生い茂る於美阿志神社

於美阿志神社遠景。前方に見える集落が、古代に檜前と呼ばれていた地で、渡来人(東漢氏)が住んでいました。

於美阿志神社の遠景と檜前集落
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まとめ:静かな境内に感じた古代へのつながり

奈良県明日香村の於美阿志神社(おみあしじんじゃ)は、古代氏族・東漢氏(やまとのあやうじ)の祖である阿知使主(あちのおみ)を祀る神社です。
この地は、宣化天皇の檜隈盧入野宮跡(ひのくまのいりののみやあと)と重なる場所にあり、飛鳥時代の始まりと、阿知使主を慕った東漢氏の信仰が今も息づくことを感じられます。

境内には、自然豊かな静けさが広がり、阿知使主を慕う東漢氏の信仰が今も受け継がれています。
秋には、彼岸花が咲き誇り、朱の花が古社を包み込むように彩るのも魅力です。

於美阿志神社の境内に咲く彼岸花

歴史の舞台となった檜隈地区で、古代の文化や信仰と静かに向き合える場所――
於美阿志神社は、古代史ファンや飛鳥時代の歴史に興味がある人におすすめの神社です。

於美阿志神社の周辺では秋に彼岸花が見られますが、明日香村全域には他にも見どころがたくさん。
散策のついでにチェックしたい方は、こちらのまとめ記事が便利です。

於美阿志神社へのアクセス情報と周辺観光

於美阿志神社と国営飛鳥歴史公園

於美阿志神社は、明日香村の南西、渡来人の里として栄えた檜前地区に位置しています。この周辺地域は、国営飛鳥歴史公園の広大な敷地の一部としても整備されており、他にも多数の歴史スポットが点在しています。

明日香村を効率よく巡るための交通手段や、この周辺を含む公園全体の情報については、こちらの記事をご参照ください。

アクセス情報

奈良県高市郡明日香村檜前594

境内自由
於美阿志神社の鳥居前に小さな駐車スペースあり
近鉄吉野線「飛鳥駅」から徒歩約15分

於美阿志神社は、「国営飛鳥歴史公園 キトラ古墳周辺地区」内にあります。

「国営飛鳥歴史公園 キトラ古墳周辺地区」の案内図

周辺の散策には、「国営飛鳥歴史公園 キトラ古墳周辺地区」の駐車場を利用されると便利です。於美阿志神社へは第2駐車場が最寄りです。

「国営飛鳥歴史公園 キトラ古墳周辺地区」第2駐車場

於美阿志神社・檜隈寺跡は、明日香村の南西、渡来人の里として栄えた檜前地区に位置しています。この周辺地域は、国営飛鳥歴史公園の広大な敷地の一部としても整備されており、他にも多数の歴史スポットが点在しています。

明日香村を効率よく巡るための交通手段や、この周辺を含む公園全体の情報については、こちらの記事をご参照ください。

於美阿志神社の参拝とあわせて訪れると、飛鳥の歴史散策がより深まります。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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