古代史をきちんと学んで、史跡巡りをもっと楽しみたいと思っているみくるです。
今回は、奈良県橿原市の「奈良県立橿原考古学研究所附属博物館」で開催中の「2023年度発掘調査速報展 大和を掘る39」についてご紹介します。会期は、2024.7.27(土)~2024.9.16(月)です。詳しく分かりやすい展示でした。
奈良県立橿原考古学研究所附属博物館については、こちらの記事でご紹介しています。
2023年度発掘調査速報展 大和を掘る39
速報展「大和を掘る」
速報展「大和を掘る」は、おもに前年度の県内遺跡の発掘調査資料の展覧会として、県内市町村、研究所、寺社など各機関のご協力のもと、毎年開催されています。
速報展『大和を掘る』は、おもに前年度の県内遺跡の発掘調査資料の展覧会として、県内市町村、研究所、寺社など各機関のご協力を得て例年開催しています。 39回目となる今回は、昨年度に発掘調査された遺跡を中心に31遺跡を選び、出土遺物・調査写真パネルを展示いたします。奈良県における最新の発掘調査の成果を多くの方々にご覧いただき、豊富な文化財を確認するとともに、奈良県の魅力を知っていただきたいと思います。
奈良県立橿原考古学研究所附属博物館
2023年度発掘調査速報展 大和を掘る39
今回は39回目の開催となります。
展示する遺跡の時代は、縄文時代から江戸時代までと多岐にわたっていますが、いずれも大和のまたは我が国の歴史を考えるうえで重要な調査成果です。その中には飛鳥時代の法隆寺若草伽藍の南辺を画する可能性がある溝から出土した各種の瓦や、舒明天皇の飛鳥岡本宮の遺構と想定されている史跡飛鳥宮跡のⅠ期遺構を区画すると思われる掘立柱塀の柱穴の断面剥ぎ取りなどがあります。また平城京の井戸の中から出土した須恵器の大甕、奈良町遺構から出土した高麗青磁なども興味深いものです。さらに県内の大学と遺跡の所在する斑鳩町が共同し、大学生の皆さんが中心となって発掘調査を行って成果を上げ、新聞やテレビ等でも話題となった舟塚古墳の出土品も展示しています。
奈良県考古学研究所附属博物館
特別展示室で開催されています。
観音寺本馬遺跡・出屋敷北十三遺跡ほか
(御所IC周辺産業集積地形形成事業に伴う発掘調査)
墓、時々川、所によりムラがあるでしょう。
観音寺本馬遺跡・出屋敷北十三遺跡ほかでは、4つの地区での調査をおこない、縄文時代から中世までの様々な成果が得られました。特に、中ノ町地区で見つかった縄文時代後期中葉の遺構と遺物は、貴重な事例です。
出土した土器には、繊細な刺突や、貝殻や結び目を付けた縄などを用いた多彩な装飾が見られます。
出屋敷北十三遺跡(第2調査)
広大な弥生時代の墓域 つくった人は何処に
御所市の北東端、葛城川によって形成された扇状地上に立地する出屋敷北十三遺跡は、今までの調査で、弥生時代中期の方形周溝墓や古墳時代前期の小型低方墳が多く検出されていますが、今次調査においても同様の遺構が検出され、南に接する観音寺本馬遺跡を含む当地一帯が弥生時代中期において大規模な墓域を形成していたことが明らかとなりました。
筑紫遺物散布地
未知の弥生時代の遺跡
布留川南流と北流に挟まれた場所に位置する遺跡です。近世、中世、弥生時代の遺構を検出しました。大型円形土坑(SK114)は、鋤や鍬などの未製品などが出土したことから、木器貯蔵穴と考えられます。
この他に、石器の未製品や石材片が出土したことから周辺で石器の制作が行われていたことが想定できます。
土橋遺跡(第20次調査)
穿孔のハカウェイ
土橋遺跡は弥生時代中期の方形周溝墓が多く発見されており、西側の中曽司遺跡の墓域と考えられています。今回も方形周溝墓を7基発見しました。周溝内からは葬送儀礼に用いられた土器が出土します。
展示品は、儀礼後に底部近くを穿孔し、周溝内に置かれた土器です。出土位置の高低差から複数回の儀礼を想定できます。
庵治ツルハタ遺跡(第1次調査)
新発見!弥生の環濠?集落
調査地は京奈和自動車道の東側、大和川と寺川に挟まれた沖積地にあり、奈良盆地のほぼ中央に位置しています。調査の結果、弥生時代中期中葉~中期末の大溝2条をはじめ、円形竪穴建物状遺構・井戸・土坑・柱穴などの多数の遺構を確認しました。
弥生時代中期の遺物を中心に、多くの土器や石器、木製品等が出土しています。
面塚遺跡
集落遺跡から大量の土器・土器・どっきー!こんな土器作れる弥生人尊敬するわ!
寺川から南へ約130m、太子道から東へ50mの地点で、約328㎡の調査を行いました。確認された遺構・遺物の時代は、縄文~近世までと幅広く、頻繁に土地利用がなれていたことが伺えます。
溝SD02では、弥生時代のほぼ全ての器種が確認され、かつ外来系土器や線刻のある土器など、特徴的な土器の出土もありました。このことから、当地周辺地域の拠点的集落であった可能性があるかもしれません。
鴨都波遺跡(第29次調査)
集落の規模はさらに大きくなりそうです
奈良盆地南部の拠点集落である鴨都波遺跡の南西隣接地において試掘調査を実施しました。調査の結果、全体の形はわからないものの、古墳時代前期とみられる南北方向の溝状遺構を検出し、多量の弥生土器や木製品が出土しました。
出土遺物の中には古墳時代中期の円筒埴輪の破片が含まれ、周辺の削平された丘陵上に古墳が存在した可能性が考えられます。
特別史跡 巣山古墳(第24次調査)
97年ぶりの再会
巣山古墳は、馬見古墳群中央群にある古墳時代中期初頭の大型前方後円墳です。
前方部調査区では、竪穴式石室東側壁の一部を検出しました。後円部調査区、東側調査区では竪穴式石室の天井石を検出しました。
盗掘埋土内から円筒埴輪、家形・甲冑・蓋形・盾形・船形・靫形などの形象埴輪、鍬形石片が出土しました。
狐井稲荷古墳(第3次調査)
幻の大王墓か?片岡に眠る葛城襲津彦系集団の奥津城
前方部で実施した第3次調査では、土手状盛土と呼ばれる技法で平坦面を造成し、土嚢袋状の粘土塊で区画して構築された墳丘盛土を検出しました。
墳丘盛土中からは、須恵器杯蓋や大甕の破片、円筒埴輪が出土しており、5世紀後半以降に造られた前方後円墳であることが明らかになりました。狐井稲荷古墳第23代顕宗天皇陵、狐井城山古墳を第25代武烈天皇陵とする説があります。
宮古北遺跡(宮古平塚古墳)(第24・27次調査)
全国初!完形の太鼓形埴輪
本調査地は小字「平塚」といい、明治時代に塚が残ると記された土地でしたが、現状は田畑となっており、正確な位置や規模は不明瞭でした。
調査の結果、全長約40mの造出し付方墳(時期:6世紀前半)を発見しました。
出土した形象埴輪のうち、太鼓形埴輪は珍しく、被葬者に迫るうえで重要と考えられます。
舟塚古墳(第4次調査)
駐車場で古墳を確認
舟塚古墳は、法隆寺参道東の駐車場にある古墳で、8.5mの円墳状を呈しています。4回の発掘調査により、横穴式石室を確認しました。
石室は右片袖式で、石室内からは太刀、馬具、玉、土器が出土しました。築造年代は6世紀後半と考えられますが、埋土から飛鳥時代の軒丸瓦が出土し、7世紀に石室が壊された可能性が高いです。
宮堂遺跡(第8次調査)
想像してみよう、宮堂で暮らしていた人々の生活
宮堂遺跡は大塚山古墳より東に広がる微高地に位置する遺跡です。第7次調査区の北隣に調査区を設定し、調査を実施しました。調査区内で大きな溝状遺構と第7次調査で確認した住居跡と思われる遺構を検出しました。
溝状遺構から高坏の破片が多く出土しました。他にはミニチュア土器も出土しています。
安倍寺遺跡(第19次調査)
古墳時代後期の竪穴住居が重複してみつかる
第19次調査は、安倍寺遺跡の遺構範囲の最も北側で東西に長い調査区を設定して実施しました。調査の結果、古墳時代後期の竪穴住居4棟や、大溝、柱穴、落ち込みなどを確認しています。
竪穴住居からは鉄滓や鞴羽口などの鍛冶関連遺物が出土し、大溝からは製塩土器、埴輪、鉄滓、鞴羽口などが見つかりました。
吉備池遺跡(第19次調査)
吉備池廃寺造営以前と造営以降の様相
吉備池遺跡は史跡吉備池廃寺跡を中心に広がる遺跡です。調査は吉備池廃寺中心伽藍北方の丘陵北東斜面でおこないました。
6世紀末前後の竪穴建物や、それ以前に丘陵上に存在したと考えられる古墳に伴う多量の埴輪片、7世紀中頃の吉備池廃寺所用瓦などが出土しています。吉備池廃寺造営以前・以後の土地利用の様相を知ることができました。
法隆寺周辺遺跡(若草伽藍跡推定地)
若草伽藍の南を画する溝か
若草伽藍は聖徳太子が建てた創建法隆寺で、今回、若草伽藍の塔跡の南側でおこなった発掘調査で見つかった東西溝は、若草伽藍の南を画する溝の可能性があります。
また、溝からは大量の瓦などが出土し、焼けた瓦や壁土などが相当数含まれていることから、これらの遺物は、若草伽藍の焼失に伴い溝に廃棄されたものと考えられます。
十市蔵場遺跡
十市の地、その歴史の1ページが明らかに!
十市蔵場遺跡は橿原市の北端部、十市町で新たに発見された遺跡です。発掘調査では自然河道から古墳時代後期から飛鳥時代を中心とする時期の遺物が多数出土しました。
藤原京の北方に位置する十市町の一帯は、中世には十市氏の本拠地であった地域でもあり、十市蔵場遺跡の南には十市城跡も所在します。今後、ますます注目の地域です!
石神遺跡東方(飛鳥藤原第209次・第212次調査)
40年の時を経て、塀の続きを確認
石神遺跡は須弥山石・石人像の発見地であり、7世紀を中心とする時期に建物や広場・石組溝などの遺構が大規模に展開していたことが知られています。
今回は遺跡の東側で発掘調査をおこない、遺跡の南端を画する東西塀・東西溝の続きを検出したほか、さらにその東側でも2条の南北溝と石組遺構を確認しました。
史跡 飛鳥宮跡(飛鳥京跡第190次調査)
飛鳥宮跡Ⅰ期遺構の区画施設を初めて確認‼
飛鳥宮跡では、Ⅰ期~Ⅲ期の3時期の宮殿遺跡が重複して存在することが明らかになっています。今回の調査では、Ⅰ期遺構(掘立柱塀SA02301、溝SD02302など)を新たに検出しました。
柱穴の断面、剥ぎ取り作業の様子、調査区の垂直写真
Ⅰ期遺構(掘立柱塀SA02301)柱穴 土層断面はぎとり
柱掘方(造営時に柱を立てるために掘った穴)・柱抜き取り穴(解体時に柱を抜き取るために掘った穴)、柱穴の検出状況、剥ぎ取り作業の様子、調査区垂直写真
Ⅲ期遺構(掘立柱塀SA5901)柱穴 土層断面はぎとり
これらは、舒明天皇が造営した飛鳥岡本宮に推定されるⅠ期遺構の分布状況や遺構配置に新たな情報を提供するもので、大変貴重な成果となりました。
おわりに
古墳や史跡を見学して、説明板に「未調査のため詳細は不明です」といった記述があると、早く調査がされてもっと色々なことが解ればいいのに、と単純に思っていました。でも、今回「発掘調査速報展」を見学して、奈良県の至るところにある遺跡を発掘調査して、割れた土器などを復元したり、X線調査や、放射性炭素年代測定法などで解析するには、大変な労力で時間が必要であろうと推察できました。
このようにして、歴史の謎が解き明かされて来たのですね。
知らなかった遺跡も多数あり、実際に現地に足を運んで、古代に想いを馳せたくなりました。これからも、係わって下さった皆様さまに感謝の念を忘れず、遺跡を大切にする気持ちを持ち続けたいと思いました。
来年に開催さる40回目の速報展が今から楽しみです。
橿原考古学研究所附属博物館の利用案内
アクセス
奈良県橿原市畝傍町50-2
無料駐車場あり(約40台)
利用案内
- 開館時間 9時~17時(入館は16時30分まで)
- 休館日 月曜日(月曜日が祝日の場合はその翌日)、年末年始、そのほかに臨時休館日あり
- 観覧料 一般400円、高校・大学生300円、小・中学生200円
詳しくは橿原考古学研究所付属博物館の公式サイトをご覧ください。
最後までお読み頂きありがとうございます。