産まれも育ちも奈良県のみくるです。今回は天理市滝本町の名刹「桃尾の滝」をご紹介します。避暑の場としても人気の滝です。
松尾芭蕉らも訪れた名刹【桃尾の滝】
布留川
桃尾の滝は、天理市を代表する川・布留川の上流の支流に位置します。布留川は東方の龍王山を源として、西方の平野部に流れ、初瀬川に合流する川です。
市街地に近づくと、石上神宮の北側を通り天理市教会本部の中を流れていきます。
真言密教の大道場!桃尾の滝
桃尾の滝は奈良県天理市の大国見山(桃尾山)の山中に位置する、落差23mの滝です。奈良盆地東麓の春日断層崖に沿う滝の中では最大の規模を誇ります。
大国見山は春日断層崖に連なる山々の一つで、天理市北部に位置します。標高は498mあり、三角形の山容が大変美しい山です。山頂からは奈良県の北半分が見渡せます。
この地は高僧「義淵」によって、龍福寺(正式名称:桃尾山蓮華王院龍福寺)が建立された後、弘法大師・空海によって真言密教の大道場として整備され、隆盛を誇っていたそうです。
龍福寺は明治時代の廃仏毀釈で廃寺となりましたが、その境内にあった桃尾の滝はかつての霊場にふさわしく、今でも滝行に来られる方が後を絶たないようです。
夏は涼を求めて来られる方も多く、毎年7月の第3日曜日には、滝行や納涼で来る方の安全を祈願する「滝開き」の神事が石上神宮の神職により執り行われています。龍福寺は石上神宮の元宮であったとも伝わります。
今年(2024年)は、7月21日(日)の14時~15時頃(荒天中止)に行われます(天理観光ガイド・天理市観光協会 – 7月21日(日) 桃尾の滝開き )。
パワースポット!桃尾の滝
避暑の場としても人気の桃尾の滝はパワースポットとしても知られます。
流れ落ちる滝の中に不動明王の石仏があります。
滝壺の左側には不動三尊磨崖仏や、如意輪観音と不動三尊の石仏もおられます。
不動三尊磨崖仏は鎌倉時代中期の秀作とされ、これを見るのを目的に足を運ぶ人もおられるそうです。
如意輪観音(一番右)は南北朝時代前期の作とされます。
市街地より2.3度低いという桃尾の滝のあたりは、ひんやりとしていてパワースポットらしい霊気が漂っているようでした。
布留の滝を詠んだ歌
桃尾の滝は後嵯峨天皇や僧正遍照らが、古今和歌集において「布留の滝」と詠んだことでも知られます。
第88代後嵯峨天皇が鎌倉時代に布留の滝を訪れて詠まれた歌が残っています。
今はまた 行きても見ばや 石の上
ふるの滝津瀬 跡をたづねて
僧正遍照は、光孝天皇がまだ親王の時に布留の滝を訪れられたことを歌を詠んでいます。
元禄元年(1688年)には松尾芭蕉も訪れています。
奈良県景観資産と『万葉集』
桃尾の滝は「四季の彩りを望む桃尾の滝」として「奈良県景観資産」に登録されています。
桃尾の滝は布留川の上流の桃尾山にあり、高さ約23m。古くから行場として知られています。滝壼の左側には鎌倉中期の秀作である不動三尊麿崖仏があります。「布留の滝」として和歌集にも詠まれた景勝地です。雨上がりの新緑、秋の紅葉、冬の積雪が素晴らしいです。
奈良県景観資産―四季の彩りを望む桃尾の滝―/奈良県公式ホームページ
夏にしか行ったことが無いのですが、四季折々に美しい姿を見せてくれるようです。
紅葉の季節にも行ってみたいと思いました。
「布留」の地名は『万葉集』に詠まれています。
(読み下し)
いにしへも かく聞きつつか 偲ひけむ
この布留川の 清き瀬の音を
巻7-1111 作者未詳
(現代語訳)
昔もこのように聞きつづけて賞美したのだろうか。この布留川の清らかな瀬の音を。
こちらの記事でも布留川を詠んだ歌をご紹介しています。
桃尾の滝へのアクセス
奈良県天理市滝本町
天理市滝本町の布留川の支流に位置します。JR・近鉄天理駅から東へ約5.5㎞(車で15分ほど)の距離です。
市街地から国道25号線を東へ進むと、左側(北側)に「桃尾の滝」の標識が見えてくるので、そこで左へ曲がります。狭い道なので通り過ぎてしまいそうになります。
国道から曲がると、道幅が狭くなり傾斜もきつくなります。対向車が来ないことを祈りつつ、鬱蒼とした木々の中をしばらく進むと、滝の手前に駐車場が現れます。
夏は涼を求める人で賑わい、駐車場も混み合います。
2024年7月21日の「桃尾の滝開き」の日は、国道25号線をはさんで南西の位置にある「ひびきデイサービスセンター滝本」様の敷地内を臨時駐車場としてお借りしているそうです。
詳しくは「天理市観光協会」さんのサイトで「桃尾の滝開き」のページをご覧ください。
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